第5話 早速、話を持って行こう
リュウショと話をして、竜人君達を連れてシャロンさんを迎えに行くという名目で国を出る事にした。
その為にする事はロゼ姉様に話をしに行かないとな。
イザドラ姉上の看病をしているから、ついでに姉上にもこの事を話そう。
「リュウショ。ありがとう」
「お役に立てて望外の喜びにございます」
リュウショは一礼する。
「じゃあ、早速いくか」
僕は席を立ち部屋を出た。
部屋の前ではリリムが立っていた。
「何処かにお出かけですか?」
「うん。ちょっとロゼ姉様の所に行って来るよ」
「そうですか。では、お供を」
「いや、要らな」
「ロゼティータ様が何処に居るのかお分かりで?」
そう言われて僕は言葉を詰まらせた。
姉上を何処に運んだか知らないんだよな。
「って、リリムは知っているの?」
「ええ」
勿論とばかりに頷くリリム。
適当にそんな事を言う性格ではないので恐らく本当に知っているのだろう。
どうやって知ったかは分からないが。
「此処はリリムに任せるか」
「ありがとうございます。では、参りましょうか」
リュウショは付いて来ないそうなので、僕はリリムの案内で姉様達が居る所へと向かった。
リリムの案内で王宮のある部屋まで来た。
「此処に二人は居るの?」
「はい。間違いありません」
断言するリリム。
そう言うのであれば信頼できるかと思い、僕はドアをノックした。
『誰じゃ?』
この喋り方、ロゼ姉様だな。
本当にこの部屋に居るんだと思いながら返事した。
「僕です。リウイです」
『リインか。入るが良い』
入室の許可を得たので、僕がドアノブに手を伸ばそうとしたらリリムが先に手を伸ばしてドアノブを回した。
部屋に入ると、誰の部屋なのか分からないが綺麗に整った部屋で其処にあるベッドにイザドラ姉様が横になっていた。
「う、う~ん。りういが、りういが、う~ん・・・・・・」
眠りながらうわ言を呟く姉上。
と言うか寝ていても、僕の名前を出すとかどんだけだよ。
姉上は無視して、僕は姉様に顔を向ける。
「良く来たのう。リイン。何か用か?」
「うん。実はね」
僕はリリアンさんが即位するのであれば、娘のシャロンさんもこの国に入国しないと駄目だろうと話した。
「そう言えば、三女のジェシカとやらが姉がもう一人居ると言う事を聞いていたな。あまりに忙しかった故にすっかり忘れておったわ」
「という訳で、僕が迎えに」
「駄目じゃ」
「何で⁈」
「お主の事だから、あの渡来人達を連れてそのまま公都とやらに行くのであろう」
くっ。鋭い。流石は僕の姉の一人だ。僕の性格をよくご存じで。
「まぁ、お主の商会も気になるのは分かるが、まがりなりにもお主は魔国の王子。王位継承権を破棄した所で王族には変わりないのじゃ。即位式という大事な儀礼には参加して貰わぬとな」
「でも」
「でももしかしもないのじゃ。お主の案は却下じゃ」
むぅ、姉様の事なら許してくれると思ったのだけどな。
最初の時点で頓挫してしまうとは、何か良い手はないものか。
横目でリリムを見ると、お手上げとばかりに首を横に振っている。
これは困ったな。
「ふふ、話は聞かせてもらいました」
と其処でイザドラ姉上がむくりと身体を起こした。
「あれ? いつの間に起きていたの?」
「リウイが来たのですから、起きないと駄目でしょう」
うわ言を言っているから寝ていると思った。
「で、先程の話ですが。わたしはリウイが迎えに行っても良いと思いますよ」
「「「えええっ⁈」」」
姉上の口から出た言葉に、僕達は耳を疑った。
「そのシャロンという女性は仮にもこの国の王族です。であれば、迎えの者もそれ相応の地位を持った者が必要です。幸い、リウイは魔国の王子です。特に問題ないです」
「じゃが、リインの事だからそれを口実に渡来人達と共に公都に行くかもしれんぞ?」
「別に良いではないですか。この国には魔国の王子は十人以上居るのです。一人居ない程度何の問題もありません」
「むぅ、それもそうじゃな」
珍しい事に姉上が僕が国を出る事に賛成している。
これは明日、嵐が来るな。
「しかし、リウイだけ行くと言うのであれば、少々箔が足りません」
「箔?」
「……むっ、お主。もしかして」
「魔国の宰相でもあるわたしが正使でリウイが副使という形にすれば問題ないでしょう」
うわああああ、どうしてさっきから援護しているのだろうと思ったけど、そう言う訳か。
要は僕と一緒に行動する口実が欲しいと言う事か。
「公私混同、此処に極まれりじゃな。じゃが、悪くはないのう」
「えええっ」
「イザドラが一緒であれば連絡も取れるし『門』の魔法でこの国に行く事が出来るじゃろう」
ぬ、ぬううう。反論が出来ない。
「という訳で、妥協案としてイザドラが一緒であればシャロン殿の迎えに行く事を許可する」
「ぐぐぐ、・・・・・・分かりました。それでお願いします」
背に腹を変えられないので、その妥協案を受け入れる事にした。




