第3話 良い所に来てくれた
「良いか。お主ら、古来よりの言葉で長幼の序という言葉がある。子供や年少者は大人や年長者を敬い、年長者と大人は子供と年少者を慈しみ事で秩序が生まれるという言葉じゃ。つまり、どんな見た目であろうと大人と年長者であれば敬う。それによって、大人と年長者は子供を慈しみのじゃ。年初者が大人を敬まらなければ、大人は慈しむ事はないと思うからじゃ。然るに、先程のお主らの態度はなんじゃっ。妾を敬うどころか、大雑把な性格な可愛い人形みたいな事を言いおって!」
「はい。すいませんでした」
「わたしも礼を失していました」
今、絶賛、姉様に説教されています。
途中は逃げるのに成功したと思ったのだが、流石は僕達の姉だ。
僕達の性格を読んで、何処に如何逃げるか予測して先回りしていた。
それにより逃げる事が出来ず捕まり、説教を受けていた。
下手に反論したら余計に説教の時間が増えると分かっているので、此処は平身低頭して説教が終るのを待った。
姉上も何も言わず謝り続けていると思ったが。
何か腰のあたりがくすぐったい。
そう感じて目線を下げると、隣に居る姉上の尻尾が僕の脇腹当たりをくすぐっていた。
説教されるのも飽きたのか暇つぶしに僕を揶揄いだした。
やめてよという意味を込めて、僕は尻尾を遠ざけようとしたが、その瞬間、尻尾が僕の手首に巻き付いた。
「~~~♪」
計算通りと言わんばかりに微笑む姉上。
そして、尻尾を伸ばして脇腹をくすぐりだした。
「ぐ、ぐぐぐぐ・・・・・・」
脇腹をくすぐられて思わず笑い声が出そうになるのを我慢する。
我慢する事で全身が震えだした。
「こりゃああっ。話をきいておるのかえ‼」
姉様が大声を上げた。
その声で姉様の尻尾は僕の手から離れていった。
「ええ、ちゃんと聞いてますよ。姉さん」
「嘘をつくではないわ! 尻尾を伸ばしてリインを揶揄っておったじゃろうが⁉」
「見間違いでは?」
「誤魔化すでないわ! お主がそんな風にリインに干渉するから、リインは魔国を出たんじゃぞ!」
「え、えええええええええええぇぇぇぇぇ⁉⁈‼」
今知ったみたいな顔で驚く姉上。そして、僕を見る。
「リウイ。国を出る程にわたしは鬱陶しかったのですか?」
「え、ええっと・・・・・・」
全部ではないけど一因ではあるかな。
でも、元々国を出る事は決めていたから、別に姉上の所為では無いと言えるような。
しかし、国を出る計画を早めたのは姉上が原因ではあるから、一因と言えば一因と言えるかな?
「どうなのですか? リウイ」
瞬き一つしないで僕を見る姉上の目を僕はすっと目を反らした。
「そ、そんな・・・・・・・・」
僕が目を反らしたのを見てショックだったのか、雷に打たれた様な顔をしてバタリと倒れた。
「妾に言われるまで気付かぬとは。こやつ、変な所で抜けているのぅ」
「まぁ、姉上らしいと言えばらしいと思うよ」
「それもそうじゃな」
姉様はそう言って姉上を抱えだした。
「さて、説教は終わりじゃ。妾の言葉を胸に刻んでおくが良いのじゃ」
「姉様は何処に?」
「この愚妹の看病じゃ。全く、こんな事で姉の手を煩わせおって」
と言って姉上を抱えて何処かに部屋へと言った。身長差があるからか、尻尾を引き摺っているが気にしないでおこう。
説教が終ったのは良いが、ここは何処だろうか?
適当に逃げ出したからか、此処が何処なのか分からなかった。
どうしたものかと悩んでいると。
「リウイ様」
「うん? ああ、リリムか」
「お話が終ったようなのでお迎えに参りました」
「そうか。って、良く此処が分かったね?」
「ふふふ、リウイ様の居る所であれば地の底だろうと海の中であろうと分かります」
微笑みながら言うリリム。
それはつまり、僕の身体に何か発信機みたいな物を仕掛けているという事か?
「と言うのは冗談です。本当はイザドラ様と一緒に逃げている姿を偶々見かけて、何かに逃げている様でしたので気になりまして探していたのです」
「ああ、そういう事ね」
それでよく見つけたなと思うが訊かないでおこう。
何か聞いたら、げんなりする予感があるから。
「では、リウイ様の部屋までご案内いたしますね」
「頼むよ」
「はい」
リリムの案内で僕は部屋へと向かった。




