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第2話 彼らに話をしに行く前に

 三人の説得は完全に出来てはいないが、とりあえず竜人君達には僕が公都と廃都に案内する事を話しておかないとな。

 そう思い、竜人君が居る部屋に行こうとしたのだが。

「・・・・・・まずい。迷ったな」

 この王宮にはそれなりにいたけど、あまり歩き回っていない上にメイドさんがそこら辺に居たので道を聞く事が出来た。

 だが、今は一人も居ない。スティードン一世が王宮を出て行った後に逃げ出したのだろう。

 弱ったな。何処にどう行けばいいのかな?

 というか、このままでは自分用の部屋に行く事も出来ないかも。

 そう困っていると。

「何じゃ? 其処で何をしているんじゃ。リイン」

 僕をそう呼ぶ人は一人しか居ないと思いながら、声がした方に顔を向けると、其処にはロゼ姉様とミリア姉ちゃんとイザドラ姉上が居た。

「どったの? リウ」

「ふむ。あの泥棒猫共が居ない事を察するに、何処かに行こうとしたけど、道が分からなくて迷ったという所でしょう」

 くっ。鋭い。

 何でこの人はそんなに凄い観察眼を持っているのに、他の事に活かせないのかな?

「ふふふ、何も言わないと言う事は図星ですね。もう、困った子ですね」

 そう窘めつつも微笑みながら僕に近付き抱き上げてくる。

 これほど言葉と行動が合っていないのはないだろう。

「全く手が掛かる子ですね~」

「そう言いながら、頬ずりするのはどうかと思うのじゃが」

「あれもイザ姉の愛情表現だよ。ロゼ姉」

「些かと言うか、かなり重すぎると思うのじゃが」

「・・・・・・愛の形は人それぞれだと思うよ~」

 それはつまり、姉上の愛情表現は重いと言っているという事では? ミリア姉ちゃん。

「お主の甘やかしはどのようなものか一度話し合った方が良いと思うのじゃ」

「う、う~ん。まぁ、良いんじゃない・・・・・・」

 と言いながらもミリア姉ちゃんは苦笑していた。

「で、リウイは何処に行こうとしたのですか?」

「ああ、実は」

 竜人君達の提案された事について、他の皆が乗り気では無いので僕が案内するという事を話した。

「何ですって⁈」

 微笑んでいた顔が一転して鬼気迫る顔をしだした。

 さながら大魔神の様な変わり具合だ。

「リウイがそんな事をしなくてもいいでしょう。そんな事は、あの蝙蝠女に任せておけば良いでしょう」

「いや、そのユエが嫌がっているから、僕がするんだけど」

「駄目です」

 キッパリと駄目だしされた。何で?

「リウイはリリアンの即位式が終ったら、暫くはこの王国でわたしの手伝いをして貰いますからね」

「手伝い? 何の?」

「この国に通商同盟を結ぶと共に、ある装置を設置するつもりです」

「装置? どんな装置なの?」

「『門』の魔法を効率よく発動する為の装置です」

 確か兄さん達は『門』という魔法でこの国まで運ばれてきたと聞いた。

 という事は、つまり『門』の魔法を安定して使える様の装置を作るという事か。

「ええ、そんなの僕じゃなくて、ロゼ姉様にやらせてよ」

「駄目です。リウイが居ないと駄目なんですっ」

「何で?」

「姉さんはどちらかと言うと、大魔法は得意ですが微細な魔力操作は得意ではないのですから」

「・・・・・・のぅ、今妾は大雑把な魔法しか使えないみたいな事を言われんかったか?」

「気のせいです」

「でも、姉様だったら魔法は得意だから大丈夫だよ。僕は正直に言って魔法がそれほど得意という訳ではないよ」

 前世であれば出来た事が、今世では出来るかどうか分からないからな。

「良いんです。リウイはわたしの傍に居たら十分なんです」

「えええ~」

「どんな激務でも、リウイが居れば心の癒しになりますから」

 癒しね。僕はまっっったく癒されないけどね。

「別に良いじゃん。姉上が居れば、癒やしになるよ」

「・・・・・・リウイよ。それはつまり、妾は可愛い人形みたいな存在と言う事か?」

 少し傷ついた顔で僕を見るロゼ姉様。

 僕は目を反らした。

「・・・・・・先程からの発言を聞いてみれば、お主ら、妾の事をそういう思いで見ておったのじゃな?」

「いや、そういう訳では」

「黙りゃああ!」

 怒声を上げるロゼ姉様。

「今日という今日は堪忍袋の緒が切れたわ、お主ら、其処に座れ! 妾が年上の敬意というものをおしえこんでやる!」

 ありゃ、怒っちゃった。

「あらあら、揶揄い過ぎましたね。此処は逃げるとしますか」

 姉上はそう言って僕を抱き抱えたまま逃げ出した。

「待てええぇい」

 ロゼ姉様は顔を真っ赤にして僕達の後を追い掛けて来た。

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