第1話 正直に話します
新章突入です。
「という事なんだよ」
「ふ~ん。成程ね~」
もう隠す事が出来ないと分かり、僕は村松さんに死ぬ直前の事と転生してからのあった事を全て話した。
その間、村松さんはジーっと椎名さんとユエの二人を見ていた。
二人は素知らぬ顔で羽根扇子を煽いだり、鼻歌を歌っていた。
「真実は小説よりも奇なりって良く書かれているけど、本当なんだね~」
「まぁ、それについては同意するよ」
「じゃあさ、お姉さん達には話してないの?」
「話してないよ。知っているのは、今の所、前世の僕の側近だったリッシュモンドとリリムとリュウショってところかな?」
ユエと椎名さんだけど、この場に居るのでカウントはしない。
後は誰か居るかなと思い出そうしたが、パッと出てこないので、話さなくてもいいだろう。
「そうなんだ。じゃあ、サナダッチにも話してないのね」
「はい。その通りです」
「何で話さなかったの?」
「いきなり、僕の前世は貴方の幼馴染ですって言われたら、正気を疑うと思ったから」
「まぁ、そうだね。わたしも会って早々、そんな事を言われたら新手の宗教かもしくはヤバイ人思うね」
「だよね~」
同じ場面に出くわしたら、僕もそう思う。
「話は分かったけどさ。聞いても良い?」
「なに?」
「イノッチはたっちゃん達をどうしたいの?」
たっちゃんって、昔の野球漫画主人公じゃないんだから。
「・・・・・・まぁ、出来るだけ叶えたいとは思う」
ヴァベリア王国の元王都。今は『廃都』と言われている場所に行って、何でそうなったのか知りたい。
後、出来れば天城君の墓があれば行ってみたい。
「出来るだけね。もしかして、公都か廃都のどっちかに行きたくないとか?」
はい。その通りです。正直に言って公都にはもう二度と行きたくない。
何で自分の黒歴史が公開されて、それを世間は凄い事だと褒められている所に行かないと行けないんだよ。前にあそこに立ち寄った時は心が死にそうだったんだからな。
「まぁ、そんな所だね」
「そっか。じゃあ、どうするの? 言っておくけどわたしはたっちゃん達に手を貸す気はないよ」
「えっ?」
人が良い村松さんからしたら思いもよらない言葉だと思った。
「だって、わたし西園寺君とは親しくてないし、ユキナッチの姪っ子さんなんて初めて顔を見たから、情も何も湧かないし、黒川って子の親は誰それ?っていう感じだし、あの龍月って子は、他ならぬ前世のイノッチを殺した天城っちの姪っ子だよ」
「それが?」
「何で、わたしが好きな人を殺した男の姪っ子の手助けをしないといけないの?」
村松さんは本心でそう思っているのか、無表情で言う。
意外にドライな性格なんだな。
「それについてはわたしも同感だな」
「わたしも」
ユエも椎名さんも同じ気持ちか。
「あの人の名前を聞く度に耳が穢れる気分なのに、それなのにその姪っ子の手助けをする? わたしはそこまでお人好しではないわ」
「ふん。今回ばかりはわたしも椎名と同じ意見だ。それに天城の死の真相を知った所で、あいつは傷つくだけだろうに、それであれば知らぬままで居た方が賢明だと思うがな」
う~ん。二人共ドライだな。此処は仕方がない。
「じゃあ、僕が公都と廃都に連れて行くしかないか」
「「「(君は)お前はどうしてそんなにお人好しなんだ(なのかな?)」」」
「えっ、そうかな?」
「そうだよ。公都は良いとして。何で、天城ッチが死んだ所に行くの?」
「墓があれば墓参りぐらいはしても良いと思って」
「人が良いのも程があるよ。リウイ君‼」
「お前、馬鹿か? 自分を殺した者の墓参りに行くなど余程のお人好しか馬鹿しかいないぞっ」
三人から凄いブーイングが飛んで来た。
「むぅ、良いだろう。別に。とりあえず、竜人君達の件は僕が責任を持って行う。はい。決定」
「「「異議あり!」」」
前世の事を話しても問題ないメンバーという事で本音を交えた口論が始まった。
結果で言えば、リリアンさんの即位式が終って、スティードン一世が降伏した頃に僕が公都と廃都に連れて行くという事で話を半ば無理矢理纏めた。




