閑話 知り合いに似ている
今回も椎名視点です。
「ほら、進みなさい。早くしないと夜が明けるわよ」
「「「――――――――――」」」
わたしは乗っている荷車を引いている男達に急かす様に声を掛けた。
男達を戦闘不能にした後、王宮まで歩くのは面倒だと思いどうしたら良いかと考えていると、路地に荷車があった。
土埃は掛かっているが、傷らしい傷は無いので大丈夫だろうと思い男達に曳かせていた。
昔乗った事がある人力車を思い出したわ。もっともスピードは比べるべくもない。
「早く進まないと、さっきの攻撃で今度はその身体が二度と動かない様にするわよ」
わたしがそう言うと先程よりも速くなった。
三人で曳いてこのスピード。これだったら昔乗った人力車の方が速かったわね。
そう思いながら、王宮へと向かっていた。
少し時間は掛かったが、夜の内に王宮の正門前まで来た。
「此処が王宮の正門なのね」
思ったよりも大きくてデカい門。近くで見るとそれがよく分かる。
大きさを例えるのなら、三階建てのマンションぐらいの大きさね。
「「「――――――――――」」」
荷車を曳いていた男達は膝と手を付いて荒く息を吐いていた。
まだ若いのに情けない。
精々、ハーフマラソンぐらいの距離しか走らせていないのに。
「じゃあ、わたしはいくわよ」
男達に声を掛けて正門へと向かう。
防壁を見たが誰も居ない。王宮内に居るのかしら?
まぁ、とりあえず中に入りましょうか。
わたしは深く息を吸って口を開いた。
口内から白い炎が噴き出た。
その白い炎は正門を溶かした。
正門は炎が当たった所からドロドロに溶けていった。
炎を吐き終えると、わたしはその正門から王宮の中へと入って行った。
中に入ると、正門近くに男達と同じ制服を着た人達が居た。
「・・・・・・こんばんわ」
とりあえず挨拶をするわたし。
頭を下げたが、向こうは何が起こったのか分からないという顔をしていた。
「貴方達のリーダーと話がしたいのだけど良いかしら?」
とりあえずこの集団のリーダーに会う。
そのリーダーと話をして、どんな人か確かめる。
憂さ晴らしは先程したので十分だけど、リーダーが話が出来ない馬鹿だったら、その時は。
そう思いながら訊ねたが。
「あ、あああ・・・・・・・」
人が訊ねているのに何を惚けているのかしら?
他の人にも聞いた方が良いかしらと思い周りを見たが、皆同じように惚けていた。
これじゃあ話は無理ねと思っている所に。
「どうした‼ 何事だ⁈」
大声で叫ぶ声が聞こえて来た。
その声の主は後ろに数十人連れてこちらに来ている。
あの子となら話せるかも。
そう思いその子の顔を見て驚いた。
「・・・・・・颯真くん?」
その子の顔は幼馴染の西園寺颯真君そっくりであった。
最後にあった記憶のままの顔なので驚いてしまった。
「な、何故、父の名を知っている。それに、その顔。昔、父が見せたアルバムに似たような顔があったよな。確か名前は・・・・・・」
西園寺君にそっくりの子はそう言って何か考え込みだした。
ちち? 恐らく父親の事だろう。
という事はもしかして、もしかして。
「君、名前は?」
「わたしは西園寺竜人です」
「へぇ、そう。そうなの」
颯真君。結婚したんだね。相手は多分、あの子ね。
「わたしは椎名雪奈と言うの。貴方のお父さんの友達よ」
「しいな? そうだ、思い出した。父の幼馴染で異世界で行方不明になった人だっ」
「うん。その通りね。で、君がこの集団のリーダー?」
「ええ、まぁ、そうなります」
「じゃあ、ちょっと話がしたいのだけど良いかしら」
「・・・・・・分かりました」
わたしは竜人君と一緒に部屋に行って、現状について話し合った。




