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閑話 王都にて

 今回は椎名視点です

「・・・・・・ふぅん。此処が王都なのね」

 龍となって空を駆ける事数時間。

 時間は夜になろうとしていた。

 これも戦争の影響でしょうね。普通ならこの時間に営業している筈の酒場が開いていなかった。

 家の明かりもついている方が少ない。

 だが、不思議な事に王宮だけ爛々と明かりが灯っていた。

「あそこに渡来人達が居るのね」

 わたしは当たりをつけた。

 此処に来る前に張さんが部下と話しているのを偶々耳にして来たのだ。

 どうして、一人で此処に来たのかと言うと。一言で言えば個人的な感情だ。

 わたしは明かりを見ながら適当に王宮への道を歩いていると。

「おお、良い女がいるじゃん」

「この王都も占領した時は沢山いたけど、何か何時の間にか居なくなっていたからな」

「何でだろな。はははは」

 下卑た声で笑う男達。

 わたしと同じ肌色。年齢的に高校生ぐらいね。

 しかも、その制服はわたし達が行っていた高校と似ているわね。

 デザインが微妙に違うけど。

「おい。あんた。何か言ったらどうなんだ? あん?」

「もしかして、俺らが怖い?」

「大丈夫、俺達は紳士だから。色々な意味で」

 そう言って男達は笑いだす。

 ・・・・・・耳障りな笑い声ね。

「ねぇ、聞いても良いかしら?」

「あん? 何をだい?」

「貴方達は何十人居るの?」

「? そんなの知ってどうするんだ?」

「教えてくれると助かるのだけど」

「俺らは全部で百四十九人だよ」

「そうなんだ」

 一つの学校の三学年五クラスぐらいの人数と言う所ね。

「そう。ありがとう」

「へへ、お礼は良いぜ。その代わりと言っちゃなんだが」

 男の一人が手を伸ばしてわたしの身体に触れようとした。

 それを見た瞬間。わたしは腰に差している長年愛用のナイフを振り上げた。

「へ?」

 男は何をされたか分からないという顔をして、手を引き戻した。

 動かそうとしたら、手が中指と薬指の間から切れ込みが入り、そのまま肘の所まで真っ二つに裂けた。

「ひぎゃあああああ、うでが、おれのうでが・・・・・・・⁉」

 腕を切り裂かれた男は悲鳴を上げながら地面に転がりだした。

「五月蠅い悲鳴ね。『(カース)いの()(イン)』」

 持っているナイフを持ち換えて一閃する。

 その一撃は男の喉に当たる。

「――――――――――――」

 男は腕を抑えながら口をパクパクさせていた。

「久しぶりに使ったけど、威力は申し分ないわね」

「こ、こここのアマ。何てことをっ」

「ぶっころされてええのかっ⁉」

 残りの男達は声を上ずらせながら腰に差している得物を抜いた。

 腰が入っていない構え。怯えた顔。

 見ていて可哀そうなくらいだ。でも。

「得物を人に向けるという事はどういう事か分かっているのでしょうね?」

 わたしは愛用のナイフを構えながら訊ねた。

「へ、へへ、分かっているのか? お、おれらは、ゆゆうしゃだぜ?」

「そいつはゆだんしたかも、ししれないがおれたちはゆだんしないぜ・・・・・・」

 歯をガチガチと鳴らしながら言う男達。

「勇者ね。異世界から転移しただけの人達でしょう。別に怖くないわ」

「そ、そういっていられるのも、いまのうちだぜ」

「おれたちぜんいんが、あんたにかかれば、まちがいなくあんたをたおせるぜ」

 虚勢でもそれだけ言えるのなら凄いわ。

 少しだけ見直したわ。まぁ、ノミの目ぐらいだけど。

「別に全員で掛かって来ても問題ないわ。それだけの人数なら憂さ晴らしにもってこいだろうし」

「「うさばらし?」」

 男達は何のこちゃという顔をする。

「ねぇ、貴方達には好きな人がいる?」

 わたしが唐突に訊ねたので男達は面食らったが、少しするとその言葉に答えるように頷いた。

「わたしもね最愛の人がいるの。それこそ、どんな姿でも生まれ変わっても愛している人が」

 そう言ってわたしはナイフを持ったまま自分の身体を抱いた。

「この身も心もそれこそ髪の毛一本ですら捧げても惜しくないし、命じたら何でもする。それこそ、親だろうと誰だろうと殺せるわ」

 わたしの言葉を聞いて男達は引きだした。

「それぐらい愛している人がいるの。そして、その人とわたしは行動を共にしている。でもね」

 わたしは足元で転がっている男を踏みつけた。

 踏まれた事で痛いのか口をパクパクと動かすが、魔法の効果で何を言っているか分からない。

「その人の傍に行こうとしたら、いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも邪魔する人がいるのよっ」

 足に力が入りグリグリと動かした。

 男は悲痛な表情を浮かべるが、気にせず踏み続ける。

「久しぶりに会えた姉だから、血の繋がった姉だし、いずれはわたしの義理の姉のなる人だからと思って譲っていたけどっ」

 思わず足に力が入り何か踏み砕いた。

「最愛の人が他の女とイチャイチャしているのを見るのがこんなに辛いなんてっ」

 昔はそういう場面に出くわした時は無理矢理にでも割り込んだ。

 でも、今は出来ない。だってリウイ君のお姉さんだから不興でも買おうものなら、リウイ君と結ばれなくなるじゃない!

「という訳で、貴方達にはその憂さ晴らしに付き合って欲しいの」

 ニコリと笑顔を浮かべるわたし。

「ふ、ふざけるなっ」

「何で、俺達がとばっちりを受けないといけないんだよっ」

「それは、・・・・・・あれよ。あれ」

「あれ?」

「何だよ。そのあれって?」

「わたしに触ろうとした事と出会った事よ」

 そう言って、わたしは男達に襲い掛かった。

 次の話も椎名視点の話です。

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