第95話 会議が終ると
やがて、話し合う事が無くなり会議が終った。
椅子から立ち上がろうとしたら、強い視線を感じた。
その視線を辿ると、ユエが僕を見ていた。
はいはい。分かっているから。此処で逃げても後が面倒な事になりそうだからな。
「リウイ。どうかしましました?」
ユエの所に行こうとしたら、イザドラ姉上が目ざとく僕を見つけた。
「ちょっと、ディアーネ殿の所に行って挨拶しに」
「そうですか。じゃあ、わたしも付いて行きましょう」
「ええ、いらない」
僕がそう言うと、雷を受けた様な顔をするイザドラ姉上。
「そんなっ、リウイはわたしが嫌いなのですかっ⁉」
「そういう訳ではないのだけど」
「じゃあ、わたしが付いて行ってもいいですね」
「いやいや、何でそうなるの?」
何でこんな極端なんだこの姉は?
う~ん。どう言ったら納得してくれるのかな。
「これ。あまりリインを困らせるでない。イザドラ」
困っている所にロゼティ―タ姉様が口を挟んできた。
「姉さん」
「姉様」
「リインにも誰にも聞かれたくない話があるんじゃろう。あまり干渉が強いと嫌われるぞ」
「嫌われる⁉ わたしがリウイにっ⁉」
凄い衝撃を受けて膝をつく姉上。
そんな姉上を放って、姉様は僕を見る。
「リインよ。ディアーネに用があるんじゃろう。ほれ、早く行け」
「うん。ありがとう」
偶にこうして助け舟を出してくれるから助かるんだよな。
僕は姉様に一礼してユエの下に行く。
「お待たせ」
「ああ、此処では不味い。着いて来い。それと」
ユエは椎名さんを見る。
「お前も付いて来るか? 椎名」
「・・・・・・そうね。じゃあ、付いて行っても良いかしら? 張さん」
笑顔なんだけど、何故かこれから決闘を行うのかと思える空気を出すのは止めて欲しい。
まぁ、その一因は僕にもあるので何も言えないけどさ。
そして、僕達は会議が行われていたテントを出た。
テントを出て少し歩くと、小さいテントが目に入った。
其処にはユエの部下達が居た。
「外で見張れ。誰も入れるな」
「「はっ」」
部下にそう命じると、ユエが先に入って行った。
それを見て、僕達もその後に続きテントの中に入って行った。
テントの中に入ると、小さい割に中はかなり広かった。
これ何畳あるのかな?
そう思いながらテントの中を見回していると、ユエは椅子に座った。
「さて、どうして椎名と合流出来た事を話さなかったのか教えて貰おうか」
「ええっと、それは」
「言う必要がないと思ったからじゃない?」
椎名さんが敢えて僕の言葉に被る様に話し出した。
「ほぅ?」
目を細めながら笑うユエ。
やばい。かなり怒っているぞ。
「いや、ユエ。そういう訳ではないんだっ」
「では、どうして報告を忘れた?」
「それは、え~っと、あれだ。忙しくて」
「ほうぅぅぅ?」
声が低くなった。これはかなりやばいな。
「どうしたの。張さん。そんなに低い声を出して? ・・・・・・ああ、リウイ君に報告されなくて拗ねているのかしら?」
「何だと⁉」
「まぁ、張さんに話すとこれ幸いに干渉してくると思ったから、リウイ君は言わなかったんでしょうね。大変よね。何でも干渉されると」
「・・・・・・ふん。お前みたいに拘束する女に比べたらまだ可愛いだろう」
「へぇ、そうなんだ」
「ふん。当然だろう」
二人は今にも戦闘を始めそうな位に睨み合った。
それから僕は報告しなかった事を謝りつつ、二人が喧嘩しない様に宥めた。
やがて、ユエは納得してくれたようで話し合いは終わった。
ユエは椎名さんと話したい事があるそうで、二人はそのまま残った。
僕がテントを出て、自分用のテントに戻ったのだが。
「あっ。お帰りなさい。リウイ」
そう言って出迎えたのは姉上だった。
姉上は僕を抱きしめてきた。
ああ、何処かに気が休まる所はないかな。
姉上の胸に顔を埋めながら思った。




