第93話 自由な姉ですみません
尋常ではない気を発する二人。
僕は何も言えず、ただ脂汗を流していた。
「ハバキ様。何も蹴り入れなくても」
「お前がそうやって甘やかすから、愚息はこうなったのだぞ」
「それはないと思いますが。それにわたしは甘やかしていませんよっ」
「「「「えっ⁉」」」」
「何ですか、その反応は?」
テントの外で話し合う母さん達。
そんなの良いから早く入って来ないのかな。
「・・・・・・入るぞ」
母さんが幕を手で退けて中へと入ってきた。
「おお、ハバキ」
「あら~、久しぶりね」
「ふん。会いたくも無かったが生きていたか、クソ親父とクソ婆」
「相変わらず口が悪いな。お前は」
「良くそんな口調で結婚出来て、こんなに可愛い子が出来たわね」
「五月蠅い。それにリウイはわたしの子供の頃とそっくりだろうが」
「まぁ、否定はしない」
「そうね。そこは同感ね」
そんなに似てるの? 今度、似顔絵が無いか探すか。
「ほぅ、それは興味深い話じゃな」
「ハバキ様とウ~ちゃんがそっくりね。似顔絵とか無いのかしら?」
「だとしたら、リウが成長したらハバキ様みたいになるのかな?」
「・・・・・・可愛いかな?」
姉さん達もその後に続いて入って来た。
「う、う~ん。今のリウイは可愛いですが。精悍なリウイも悪くはない様な。でも、ハバキ様みたいになるのはちょっと、でもそれはそれで野性味溢れる人物になりそうな気が」
イザドラ姉上だけブツブツと話しながら入って来た。
「うむ? 其方達は何者だ?」
「見た所魔人族のようだけど、リウイちゃんの知り合いかしら?」
おや? 御祖父さんが初めてあったみたいな反応だな。
僕がそう思っていると、ユエが口を開いた。
「軍勢を集める様に頼んだのはわたしだからな。だから、リウイ殿のお姉様方と顔を合わせてはいないのだ」
「成程」
僕が頷いていると、ユエが右手で左頬を掴んで横に引っ張った。
あれは、後で顔を貸せという意味のハンドサインだったけ。
まぁ、言わなかった僕も悪かったからな。
「うん。という訳で紹介しますね。長女ののロゼティータ、次女のイザドラ、三女のフェル、四女のヘルミーネ、五女のミリアリアです」
「宜しくなのじゃ」
「初めまして、リウイの御祖父様」
「う~ん。どちらかと言うと、ハバキ様に似ているわね」
「ふむ。中々の御仁と見える」
「あっはは、強そう~」
挨拶する姉さん達。
「ふむ。リウイの腹違いの姉達か」
カリショウ祖父さんは興味深そうに見ていた。
「じゃあ、わたし達も自己紹介した方が良いわね。わたしは『八獄の郷』のカミノサラ家の前当主のセクシャーナト・カミノサラよ」
「儂はカリショウ・ラサツキだ。ラサツキ家の当主でリウイの祖父だ」
御祖父さん達の紹介を終えたので、会議を行う事になった。
それで、椅子に座る事となったのだが。
「・・・・・・」
先程から無言であった椎名さんが笑顔で手招きしてきた。
自分の隣に座れと言う意味だろう。
「・・・・・・」
ユエはユエでジト目で僕を見る。
目で隣に座れと言っている。
これはどっちかに座らないと駄目だろうな。どうしよう。
「さぁ、リウイ。こっちに座りましょうね」
と言って、イザドラ姉上が僕を強引に隣に座らされた。
「「・・・・・・っち」」
二人共、悔しそうな顔をしたが、直ぐに真顔に戻った。
とりあえず、助かったかな。




