第91話 何があったのやら
「さて、そういう話は後にして、今は王位についての問題の方が先だろう」
「そうだね」
まぁ、既に解決しているけどね。
「リウイよ。何か良い案はあるか?」
「王都内にある『鳳凰商会』に連絡を入れて、中から扉を開けて其処から侵入して制圧」
「それが一番良策か」
「だと思うよ」
それが一番王都を傷付けないだろうな。
というか、姉上が近付いているという話は聞いているから王都の人達は逃げ出しているんじゃあないのかな?
「では、話はこれで終わりだな。失礼する」
兄上がそう言ってテントから出て行った。
「じゃあ、ちょっとお話をしましょうか。貴女達のお姉さんから美味しい御菓子を分けてもらったから」
御菓子か。誰が上げたのだろうか?
「何か凄い目付きが怖い人が『菓子を作ったので茶をお供にどうぞ』と言って渡してくれたわ」
ああ、ヘル姉さんか。
あの人。あの目付きで勘違いされるけど料理とか得意なんだよね。
料理を作っている姿を見ても、目付きが悪いから美味しい料理が誰かを毒殺する料理に見えるからな。
「では、ご相伴に与ります」
「あたしも頂くわ」
僕達はリリアンさん達と一緒に茶を飲んだ。
茶を飲み終わると、僕とミリア姉ちゃんはテントを出た。
ジェシカはリリアンさんはまだ話があるとかで残った。
テントを出ると、二コラさんが剣を杖にしながら歩いているのが見えた。
「ど、どうしたんですか?」
「ああ、これね。ちょっとした事だから気にしないで」
と言いながらも凄い疲れた顔をしていた
「じゃあ、ちょっと失礼するわね」
二コラさんは剣を杖にしながらテントの中に入っていた。
「何があったんだろうね?」
「まぁ、あたし何となく分かるよ」
「じゃあ、教えて」
「当事者に聞いた方が良いと思うよ」
「当事者?」
誰の事を言っているんだと思うと、ミリア姉ちゃんが指差した。
そちらに目を向けようとしたら
「ふふ、りうい、みつけましたよ~」
そう言って僕に抱き付く姉上。
振り向いた瞬間に抱き付かれたので、僕の視界は姉上の胸で潰された。
「むががが」
「ああ~、いやされます~」
僕の頭を抱き締めて離さない様に手を回した。
最低限の呼吸は出来る様に隙間をあけて、力加減を加減していた。
「むぐ、むぐぐぐ~」
「ふぅ~、あの人以外に強くて疲れました。でも、リウイのお蔭で癒されます~」
僕からは見えないが綻んだ顔をしているんだろうな。
「イザ姉。すっごいだらしない顔をしているね」
「別に良いでしょう。この前までこうする事も出来なかったんですから」
「まぁ、そうだけどね」
「ところで、リウイ」
姉上は僕の頭から手を離して話す体勢を取るようににしてくれた。
僕は顔を上げた。
「何?」
「先程はわたしを放って何処に行ったのですか?」
「リリアンさんと話をしに」
「むぅ。わたしを放っていくとは、少々薄情ですよ」
「そうかな?」
あんな低次元な話をする人を放っても良いと思うのだけどな。
「もう、リウイは姉に対する敬意が足りないですよ」
「そうかな?」
「そうです。今日は其処の所をキチンと教えてあげますよ」
そう言って姉上は僕を抱き抱えたまま自分用のテントに連れて行かれた。




