第88話 お互い面倒な姉を持ったね
俗に言うメンチ切るという事をしている二人。
僕には見えないが、二人の間には火花が散っているのだろう。
「ど、どどどうしましよう。りういさん」
睨み合う二人を見て慌てるジェシカ。
それはまるで水を掛けられた猫の様であった。
う~ん。普段なら僕が慌てている所だろうが、ジェシカが慌ててくれた事で冷静になれた。
「まぁ、落ち着いて。此処は二人を宥める前にジェシカが落ち着かないと」
「そ、そうでしょうか?」
「混乱している人が宥める事は出来ないよ」
「そ、そうですよね。ふ~、ふ~」
ジェシカが気を静めようと深く息を吸った。
それで徐々に落ち着きだした。
さて、あちらは。
「ふん。初対面の人にこのような挨拶をするとは、全くお里が知れますね」
「人の妹に殺すつもりの殺気をぶつける非常識な女が何を言うのかしら?」
「わたしの可愛い弟に近付いて来たからよっ。普通はしないわ」
「どうだか、こういう事は普段からしているからするのでしょう。まぁ、リウイ君が可愛いのは認めるけど、わたしの妹の方が可愛いわ」
「聞き捨てなりませんね。わたしの可愛いリウイの方が貴女の妹よりも遥かに可愛いでしょう」
「何を言っているの。わたしのジェシカの方がリウイ君よりも遥かに上を行く可愛さを持っているわ」
「何ですって!」
「何よ!」
・・・・・・あれ? 途中から低次元な話になってないか?
「わたしの可愛いリウイはね。赤ん坊の頃はそれはもう可愛いくて、歩けるようになったらわたしに直ぐに懐いたんですよ。小さい頃は「ねぇさま~、ねぇさま~」と言ってわたしに抱き付いて来たんですよ。その時の嬉しそうな顔と言ったら、・・・・・・わたしはその笑顔の為なら世界と戦争出来ると思いましたね‼」
ドヤ顔をするイザドラ姉上。
その話には一部嘘が入っているんですけど、僕が抱き付く前に貴女が抱き寄せていたじゃないかっ。「ねぇさま~」と呼んでいたのは本当だけど。
というか、そんな話をされると恥ずかしいだけど。
それを聞いた二コラさんは。
「ふっ。その程度? ジェシカの方が凄いわよ! あの子の赤ん坊の時はね。微笑んだだけで、大の大人もノックアウトさせる位に可愛かったわよ。その上、言葉を話せるようになって一番最初にしたのが歌を歌う事よ。凄い聡明なんだからね。更に副都にはあの子非公認の親衛隊があるのよっ」
こちらも凄いドヤ顔をする二コラさん
「姉様~」
ジェシカが恥ずかしそうに顔を赤らめて両手で顔を覆う。
気持は良く分かる。
「なにを、それでしたらわたしのリウイは」
「それなら、ジェシカは」
二人は身内自慢と言う聞いているこちらからしたら羞恥心が留まる事が無い話をしだした。
「・・・・・・ジェシカ」
「はい。・・・・・・」
「リリアンさんは何処に居るの?」
「あちらのテントに居ます」
「じゃあ、案内してくれるかな」
「・・・・・・分かりました」
僕とジェシカはその場を離れた。
背には二人の会話が聞こえて来るが聞きたくない僕は耳を塞いだ。




