第84話 疲れる
リリアンさん達の事はロゼ姉様に任せて、僕はイザドラ姉上が居る所へと向かった。
行く準備をしている間に、ミリア姉ちゃん達がやって来た。何時の間にか話を聞いたとかで護衛としてミリア姉ちゃんが付いて来る事になった。
ふむ。ミリア姉ちゃんか。護衛としてなら問題ないか。
準備を終えた僕達は足が速い鳥型の魔獣に乗って南へと向かう。
この鳥型の魔獣は種族名サンダーバードという魔獣だ。
巨大な鷲の姿をしており身体全体の色が雷みたいに黄色くて、嘴は赤く剣の様に尖っていた。
羽毛はフカフカでこのまま顔を埋めて眠る事も出来るのでは?と思った。
一番足が速いというだけあって、夜に野営地を出たのに朝には南部に着いていた。
いやぁ、空を飛んでいる魔獣に跨って朝日を見る事が出来るとは、これも転生した事で出来た事だな。うん。良い眺めだ。
「もう少しでイザ姉が居る所に着くと思うよ」
サンダーバードの手綱を操るミリア姉ちゃんは朝日を見ても何とも思う事ないようで、地上を見下ろしていた。
やれやれ、風雅な趣味はないようで。
「ところで、リウ」
「なに?」
「わたしが頼んだことをしてくれてる?」
頼んだ事? 何だっけ?
「ああっ、その顔はあたしが頼んだ事を忘れたわねっ」
「そ、そんなことはないよ。・・・・・・・多分」
「じゃあ、頼んだ事を言ってみてよ」
・・・・・・えっと。何だっけ?
待てよ。ミリア姉ちゃんの事だから、僕に頼む事と言えば。
「え、えっと、・・・・・・巨乳の女性の似顔絵を送る?」
確かこうだったと思う。
ドキドキしながらミリア姉ちゃんの顔を見る。
「何だ。覚えているじゃない」
口を尖らせていたミリア姉ちゃんが一転して笑顔になった。
ほっ。これで良し。
そう話していると、前方方煙が上がっていた。
黒くないので恐らく炊事で上がる煙だろう。
「ミリア姉ちゃん」
「誰が居るのか見てみよう」
そう言って僕達は煙が上がっている所へと向かった。
僕達はその煙が上がっている所に着いた。
其処には家があった。
いや、家と言うよりも屋敷というのが正解か。
やたらと広い二階建ての屋敷。塀で囲まれている中には庭もあった。
普通に見ればこんな何もない所に立っている豪邸と思うだろう。堀の周りに兵士達が居なければ。
あの軍装。何処かで見た様な。
「あの軍装はイザ姉の麾下の『魔導甲殻兵団』の軍装だね」
「という事は、あそこにイザドラ姉上が居る可能性があるね」
「だね。という訳で降りるよ」
ミリア姉ちゃんがそう言って手綱を操ってその豪邸の傍に着地した。
すると『魔導甲殻兵団』の兵士達が僕達を囲みだした。
「何者だ⁉」
「うん? ああ、これはミリアリア王女殿下!」
ミリア姉ちゃんの顔を知っていた兵士が慌てて敬礼した。
それを見て周りの兵士達も敬礼した。
「ミリアリア様。どうして、こちらに?」
「う~ん。イザ姉。居る?」
「イザドラ様ですか。少々、お待ちを」
兵士が一礼して離れて行った。
僕達を囲んでいた兵士達が警戒を解いて囲むのを止めて離れて行った。
そうして待つ事、数分。
兵士がイザドラ姉上を連れてやって来た。
「おっはよう~。イザ姉」
「ミリア。どうしたの? こんなに朝早くに・・・・・・って、あら?」
イザドラ姉上がミリア姉ちゃんと話していると、僕が視界に入ったようだ。
そして、僕の傍まで来ると無言で頬を弄りだした。
引っ張られたり潰されたりと色々とされた。
「この感触、・・・・・・リウイなのですか?」
「うん。そうだよ」
僕がそう答えると、イザドラ姉上は笑顔を浮かべて抱き絞めて来た。
「ああ、りうい、リウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイリウイ~~~~~~♥♥♥」
僕を抱き締めながら叫ぶ姉上。
「久しぶりですね。元気そうでなによりです。ああ、こうして会えるなんて思いもしませんでした。何処か怪我は有りませんか? お腹は空いてませんか? 思っていたよりも元気そうでなによりです」
頬ずりして僕が元気そうな事を喜んでいる姉上。
国を出る前と変わらなくて良いと取るべきか駄目だろう取るべき分からないけど、とりあえず言えるのは疲れる。




