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第79話 その手の中にあるのは何ですか?

 それから数時間後。


 オル兄ちゃんに案内してもらい、兄さん達が野営地へと向かった。

 久しぶりに会えた事なので、馬車を出て魔獣に跨りながらオル兄ちゃんと話した。

「しっかし、お前の知り合いの商会の会長の姉ちゃんは凄いな。俺達の麾下の軍団を飢えさせる事ない兵站を作ってやがる」

「そうなんだ。流石はディアーネ会長」

 一緒に古今東西の兵法書を読んでいたからか、どんな強大な大軍も兵站が重要だという事が分かっているようだ。

「ユミルの兄貴なんかその手腕を買って部下に来ないかと勧誘していたぜ」

「流石はユミル兄さん」

「でも、どんな高待遇でも断っていたのは驚いたな。『わたしは自分で作った商会がありますので』って」

「そうなんだ」

 まぁ、ユエらしいと言えばユエらしいな。

「しかし、その商会の会長に随分と気に入られているな。お前」

「僕もそう思よ」

 前世の幼馴染だからだろうけどね。

「っと、そろそろ着くな」

 オル兄ちゃんが視線の先に柵に覆われた野営があった。

 見張り台や野営地を周囲を警戒しながら巡回している部隊も見える。意外に警備が厳重だ。

 野営地が目の前か。これで落ち着けるな。


 そう思った僕は馬鹿だと思った。

「がっははは、お前も大変だったな。リウイ」

「しかし、無事で何よりだよ」

「久しぶりに会ったが元気そうで何よりだ」

 そう言って僕の頭を乱暴に撫でまわすアリオク兄さん。

 僕が元気そうな姿を見て安堵するユミル兄さんとデモゴルゴン兄さん。

 僕が無事で喜んでくれるのは嬉しいけど、あの、今の僕の状態に何か言う事は無いのですか?

 現在、僕はヘル姉さんの腕の中で抱き抱えられているのですが?

「無事で、良かった」

 ホクホクした顔で言われてもな。

 僕達が野営地に着くなり、待ち構えていたヘル姉さんが僕を見るなり抱き抱えだした。

 嬉しそうに抱き締めてくるので、胸が当たるのは嬉しかった反面力一杯込めて抱き締めるので呼吸困難になった。必死にタップして何とか分かって貰えた。

 そして、ヘル姉さんにこの野営地には誰が居るのか聞いた。

 今いるのはアリオク兄さんとユミル兄さんとデモゴルゴン兄さんだけらしい。

 他の兄さんや姉さん達は付近にある城や都市に降伏勧告かもしくは陥落させに行ったそうだ。

 皆、夜には帰るそうなのでその時に改めて、リリアンさん達に自己紹介するという事にした。

 それを聞いたリリアンさん達は了承して、長い間馬車に乗っていたので疲れたと言って用意されているテントに引っ込んだ。

 ジェシカは僕を見て何か言いたげであったが、リリアンさんに引っ張られてテントに引っ込んだ。

 僕はテントの中に引っ込む前に兄さん達と話そうと思い離れようとしたら、ヘル姉さんが。

「久しぶりだから、暫くこのままでいよう」

 と言って僕を抱き抱えて歩き出した。

 そして、今に至る。

 ヘル姉さんの腕の中に居る僕を見ても兄さん達は特に何も言う事はない。

 寧ろこれが自然だと思っている顔だ。

 いや、問題にしようよ。

 そう思いながら、兄さん達を見る。

「こうしてリウイが戻ってこれたのだから安心して攻め込めるな」

「そうだね。しかし、油断は禁物だよ」

「確かにな。この国の貴族は糞しか居ねえが、軍はなかなか強かったぜ。まぁ、俺達の軍ほどではないけどな」

「とはいえ、敵もこのままにするとは思えない。その内、何らかの手を打ってくるだろう」

「ユミル兄さんはどんな手が来ると思う?」

「そうだね。同盟国から援軍又は私財を投げ売って強力な傭兵団を雇うっというところだね」

「出来る事と言えばそれぐらいか」

 兄さん達、僕に関して何か言う事は無いのですか?

 そう思っている所に、空が暗くなった。

 何だと思いながら見上げると、其処には巨大な物体が居た。

 姿形から人工物では無く動物の様だ。

「これは?」

「デカいな」

「ふむ。はぐれ魔獣か?」

 その物体を見上げていると、何かが落ちて来た。

 その物体が僕達から少し離れて所に落ちた。

 ズドン‼

 そんな派手な音と共に地面を隆起させる。

 砂煙が舞い上がったが、其処から人のシルエットが浮かんだ。

 少しすると砂煙が治まるとそれが誰なのか分かった。

「おうっ、今帰ったぜ!」

「アードラ兄貴」

「お帰りなさい。アードラ兄さん」

「全く何処に行ってたのやら」

「はっはは、そう言うな。ちゃんと収穫はあるからよ。って、リウイじゃねえか。久しぶりだな!」

 左手を振りながら男らしい笑顔を浮かべるアードラ兄貴。

「久しぶりだね。兄貴」

「そうだなっ。誘拐されたと聞いたから、どんな目に遭っているか分からなかったが。元気そうだな。結構な事だな。はっははは」

「・・・・・・兄貴。豪快に笑っている所悪いけど」

「ああ、丁度わたしも聞こうと思っていた所だ」

「同感だ」

 僕が見ているものを見て、同意見なのかユミル兄さんもデモゴルゴン兄さんも頷いた。

「うん? 何だ?」

 僕達はアードラ兄貴が右手に抱えているものを指差す。

「「「それは誰?」」」

 アードラ兄貴の右手にはドレスアーマーと言うべきを物を着こんだ女性が抱えられていた。

「ああ、これか。帰って来る途中になんとかという国の軍船と出くわして戦って勝ったら、この女が乗っていたから戦利品として持って帰って来たぜ」

 歯を見せて笑いながら言うアードラ兄貴。

 さて、何処の国の人なのかじっくり聞かないとな。

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