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第76話 とりあえず、兄さん達と合流するか

 馬車の外から投げた物が当たる音と王都で暮らしている人達の怒りの声が聞こえて来た。

 不思議な事にそれらの音は馬車から見て左側(・・)からしか聞こえない。

 右側には人は人っ子居ない。

「御者さん。外の様子を教えてもらえますか?」

「ひいっ。左側から民衆が石や何でも投げてきます。それと、先頭の方でも騎士や兵士達が民衆と揉めているようで、ああ、民衆の中から木の棒やフォークを持った物達が今出て来て兵士達に攻撃しています」

 飛んでくる色々な物を何かで防ぎながら外の状況を教えてくれる御者さん。

 ふむ。予定通りに行動しているな。後は。

 そう思っている所に、右側の扉が叩かれた。

 御者は左側から飛んでくる物を防ぐので手一杯で扉を叩く者に気付いていない。

 僕は右側の扉に近付く。

「この世の全ては?」

『我が主の物』

 事前に決めていた合言葉を言うと、向こうの返事を聞く。

 良しと思いながら、僕は扉を開けると其処にはリリムが居た。

「お待たせしました。皆様。こちらへ」

「分かった」

 僕がそう答えて、リリアンさんを見る。

「行きましょうか」

「ええ、そうね」

 まずは僕が外に出て安全を確認してから、リリアンさん達を外に出た。

「全員出ましたね。では、こちらへ」

 リリムが手で示した所には路地裏へと通じる道があった。

「道のりは?」

「頭の中に入ってます。それに地図も持っていますので」

 なら、安心だな。

 それから僕達はリリムを先頭にしてその道を進んでいった。

 良し。これで後はあの(・・)()まで進めば、後は何の問題無い。


 道を進んで進んで行き、路地を出るとある店の前に出た。

 その店の前には馬車が一台停まっていた。

 その馬車の周りには沢山の人達が居た。

 その中の一人が路地を出た僕達を見るなり駆け寄って来た。

「おお、皆様。よくぞ、御無事で」

 そう言う人は甘い整った顔立ちの男性であった。名前はヴィンケルという。

 耳が横に尖っているので、恐らくエルフだと思う。

 十人中10人の女性が振り返るイケメンというのは、こういう人を言うのだろうな。

 そう思いながら、僕はその男性と話す。

「馬車を用意してくれてありがとうございます。ヴィンケルさん」

「いえいえ、これも会長のご命令ですから。会長のご指示とあれば、我ら『鳳凰商会』一同全力を持って事に当たります」

 歯は光りそうな位に白く輝かんばかりの笑顔を浮かべるヴィンケルさん。

 おお、これがイケメンスマイルという奴か。

 生まれ変わって初めて見た。

 僕の周りの男性の殆どというかほぼ全員が豪快な人だったからな。

「リウイさん。早く乗りましょう」

 そのイケメンオーラに圧倒されていると、ジェシカが馬車に乗ろうと促してきた。

 いけないいけない。さて、乗り込むとするか。

 僕達は用意された馬車に乗り込んだ。

 乗り込むと、僕は窓から顔を出してヴィンケルに話し掛ける。

「リュウショ達は何処で会えます?」

「西門を出て少し進みますと合流する予定になっております」

「分かりました。じゃあ」

 僕は顔を引っ込めると、馬車が動き出して西門へと向かった。

 スティードン一世たちの行列は北門に向かう道なので、僕達とかち合う事はない。

 更に西門を警備している人達には既にヴィンケルさんが袖の下を渡して出て行くのを咎めない様にしてもらっている。

 なので、此処までくれば後はもう問題は無い。

 そう思うと、僕は背もたれに持たれて安堵の息を漏らした。

「上手くいきましたね」

「ああ、そうだね」

 ジェシカが計画が上手くいった事に嬉しそうに話しかける。

 僕も同じ気持ちなので頷いた。

 今回立てた作戦はこうだ。

 ユエの『鳳凰商会』の支店があるので、その支店長のヴィンケルさんが事前にこの日に王都に暮らしている人達に『国王が我が身可愛さに重臣達だけ連れて逃げる』『王都に暮らしている者達は連れて行かない」という噂とスティードン一世達が城塞へと向かう為に通る道を教える。

 そして、馬車の進路に対して左側に民衆が来るように誘導した。

 スティードン一世達が其処を通りかかると、民衆は逆上して暴動を起こす。

 その間に馬車を密かに出て『鳳凰商会』の店の前まで行き、其処で商会が用意した馬車に乗り西門を出てリュウショ達と合流して、其処から西部に進み兄さん達と合流。

 これが今回の作戦だ。

 いやぁ、上手くいって良かったな~。

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