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第74話 ああ、忘れてたっ

 昼食を食べ終えると、どんな方法でこの王宮を脱出するか、脱出したら何処に行くかを話した。

 とりあえず、脱出する方法は決まったが何処に行くは決まらなかった。

 もう夜なろうと言う時間なので、それ以上はまた明日話して決める事にした。

 リリアンさんに「夜も一緒に食べない?」と誘われたが、部屋にリリムが居るからな。

 夜までには戻ると言って出て来た。

 そう言って戻らないと機嫌が悪くなるからな。

 ジェシカは残念そうな顔をしていたので後ろ髪引かれる思いだったが、仕方がないと思い諦める事にした。ちなみに、リリアンさん達は昨日の内に脱出する準備は済ませていたそうだ。

 あまりに準備が良いので僕に言う前に話して決めていたのだろう。

 そう思いながら、僕は部屋へと戻った。

「お帰りなさいませ。リウイ様」

 リリムは笑顔で僕を出迎えた。

 ほっ。機嫌は良いようだ。

「スンスン。特に抱き付いたような匂いはないようね」

 自分の顔を近づけて鼻をならしながら小声で何か言っているが、あまりに小さいので聞こえない。

「何か?」

「いえ、何も」

 顔を離したリリムは笑顔で答えた。

「今日の晩御飯はわたしが作りましたので、好きなだけ食べて下さい」

 うっ。リリムの料理か。

 困ったぞ。

 リリムの料理は色彩感覚の面で言えば常人離れしているので、どうにも万人受けしないのだ。

 だって、紫色のスープとか青色の肉とか出て来るのだ。

 本人は「我が故郷の郷土料理ですっ」と胸を張って自信満々に言うのだ。

 スープをスプーンで掬うと、何故か人の顔が見えたのだ。肉を刺したりナイフで切ると血が吹き出て来てきりもした。

 正直に言って、口に入れる前に食欲を減退させるのだ。

 食欲が無いと言おうにも、僕に褒めてもらいたいのかワクワクしている顔で僕を見て来るのだ。仕方が無いので勇気をもって口を入れると、何故か普通に美味しかった。

 それ以来、リリムの料理は美味しいのは分かったのだが、食べる前に食べる気を無くすのでリリムに料理を作らせない様にしようと、皆と相談して決めた。

 ……あの料理を食べるのか。

「あ、ああ、今日は食欲がないから」

「まぁ、それは大変ですっ。慣れない土地で体調を崩したのですかっ。今すぐに医者を呼んできますっ」

「今治ったから大丈夫っ」

「では、食べれますね」

 笑顔で言うリリム。

 くっ。逃げる事が出来ない。

「では、準備しますね。ああ、その前にリウイ様」

「なに?」

「この王宮を逃げ出したらどちらに方に逃げるのですか?」

「どちらの方?」

「北部、東部、西部、南部のどちらに逃げるのかと思いまして」

「ああ、そこら辺は明日また集まって話して決めるよ。リリアンさん達はもう脱出の準備は出来ているようだから、逃げる方面を決めたら何時でも脱出できるし」

「そうですか。わたしとしては北部と東部以外であればどこでも構いませんよ」

「? どういう事?」

 言葉の意味が分からないのでリリムに訊ねた。

「どういう意味と言われても、北部にはあの蛇モドキ女が居ますし、東部には蝙蝠女が居ますからあの二人の下に行くのは癪に障ります」

 …………ああっ⁉ 忘れていた‼

 そうだった。北部は椎名さんが、東部はユエも同行している軍が、南部はイザドラ姉上が攻めているんだった‼

 脱出して皆と合流する事を考えていなかった。

 しかし、まずいな。東部のの方に行けば。

『どうして椎名と合流した事を教えなかった?』

 とユエに言われそうだな。

 かと言って、北部に行けば。

『ねえ、今まで何人の女の人と話したの? 名前を教えて? 殺すから』

 椎名さんの場合こんな事とか言いそうだ。

 だが、南部に行けば。

『リウイ。分かりましたか。外の世界はそれだけ危険だという事が。大丈夫、これからわたしがずっっっっっっっっと一緒に居てあげますからね♥』

 イザドラ姉上の事だからこれ幸いと僕を捕まえて拘束する可能性が出て来たな。

 ……どれも嫌だ。しかし、こうなると残るは西部かしかないな。

 兄さん達の方なら大丈夫だな。うん。

 明日、リリアンさんに西部に逃げませんかと提案するか。

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