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第72話 付いて行く義理は無い

 部屋を出た僕達はリリアンさんの部屋に向かった。

 幸いリリアンさんは部屋に居てくれたので、話がしたいと言うとすんなりと通してくれた。

「で、今日は何の用? ジェシカと本当に付き合う気になった?」

「・・・・・・この状況で良くそんな軽口を叩けますね」

 この国は攻め込まれているというに、そんな事を言えるとは呆れるを通り越して感心するな。

「冗談よ。半分は」

 残り半分は本気なのか。

「・・・・・・実は先程、この者から情報が入りまして」

 この人のペースに付き合ったら疲れるので、話す事だけ話そう。

 そう思い、僕は手でリュウショを示す。

「お初にお目に掛かる。リュウショと申します」

「初めて見る顔ね。リウイ君とはどういう知り合いかしら?」

「僕とは直接知り合いではなく、僕の部下のリリムという人の友人でして」

 この部屋に来る前に僕との関係は、とりあえずリリムの友人という事にしようと話して決めていた。

「あら、そうなの。リリムと言うとあの人かしら? 赤みがかった射干玉の髪を後ろで一つに纏めている刃みたいに鋭い瞳を持った人」

「そうです」

「そうなの。佇まいから只者では無いと思っていたけど、成程ね」

 リリアンさんは何か納得した様に頷いた。

 ちなみに、リリムが此処に居る事はリリアンさん達には話していない。

「それで手に入れた情報ってどんなのかしら?」

「はい。リュウショからもたらされた情報によると、どうやら王国の上層部が王都を出て近くの城塞に移るようです」

 僕の報告を聞いたリリアンさんは目を細めた。

「その話、本当かしら?」

「リュウショからの報告なので、僕は信頼できます」

 僕の話を聞いたリリアンさんは考え出した。

 これは仕方がない。僕は付き合いがあるからリュウショの報告を聞いても信頼できるが、リリアンさんが付き合いが浅い僕達の話を聞いても信じろと言われても二の足を踏むのは当然だ。

「・・・・・・城塞に移るという事は籠城という事よね?」

「はい。そうなります」

「この現状を鑑みても可能性としては有り得るわね」

「そうなのですか」

 むしろ、籠城して助かると思うのだろうか? 

 悪政を敷いてる上に、四方から攻められているこの国を助ける酔狂な国は無いと思うが。

「昔ね父が存命の時にカカヴァブオ王国の南にあるエースパニイン王国という国から政争に敗れた王族が亡命した事があったのよ。その王族が父に自分に王権を取り返す為に力を貸して欲しいと言ったのよ。父は勢力拡大の為に軍を出したの。結果、その王族がその王国の王になったのよ」

「つまり、その縁で援軍を出す可能性があるという事ですか?」

「可能性としてはあるわ。西方ではどんな国家にでも戦争を仕掛ける事から『狂王』ことエースパニイン王国の国王アインヌフ一世が居るから」

「その人は強いのですか?」

「う~ん。あまり会った事が無いから好戦的な性格としか覚えてないわ」

「そうですか」

 城塞に籠るという事は、その国に援軍を送ったと考えた方が良いかな。

 まぁ、それは追々考えるとして、今は別件だ。

「リリアンさん。その城塞への移動の際に逃げましょう」

「逃げる⁉」

 この状況でそんな提案されるとは思わなかったようで驚きの声をあげるリリアンさん。

「逃げる事が出来るの?」

「リュウショが手引きをしてくれます」

 だよなという意味を込めて僕はリュウショの目を見る。

「お任せください。王都を出た後の警備はわたしと部下達がお守りします」

「信用してもいいのかしら?」

「其処はお任せを」

 リュウショは一礼する。

 それを見てリリアンさんはまた考え出した。

「・・・・・・城塞に行くのはいつかしら?」

「調べた所、七日後です」

「そう。じゃあ、明日返事するわ」

「分かりました」

 本当は今日返事が欲しかったが、急いても仕方がない。

 明日返事すると言うので明日まで待つ事にしよう。話す事は終わったので、僕達は部屋を後にした。

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