第69話 こうして聞くと哀れにも思う
まぁ、それは後にしてこの国は現状を理解しているのだろうか?
そこら辺どうなのだろうか?
「リリム。この国はどういう対応中なのか分かる?」
そう尋ねるとリリムが自分の胸に手を入れた。
動かす度に育った果実がタプン、タプンっと揺れる。
思わず目が奪われそうになったが、自制心を働かせて見ない様にした。
そして、リリムは胸から手を抜くと何かの石の様な物を出した。
「これは?」
「この部屋に来る前に幾つかの部屋に盗聴する事が出来る魔石を取り付けました。その内の一つです」
「ふむ。で、どうやって聞くの?」
「此処を押せば」
リリムが指差す所に出っぱりがあった。其処を押すと怒号が聞こえて来た。
『西方から大船団が接近中。数は海を覆い尽くす程の数との事、海の青さが三割ほどしか見えないとも報告来ております!』
『馬鹿な⁉ どうやってそんな大船団を調達したと言うのだっ⁉』
『その船団の旗は? 何処の国だ?』
『沿岸基地の見張り台からの報告に寄りますと鬼の顔の下に蓮の花が描かれた旗と白龍と赤龍が対となった者と腹の所に鬼の顔が描かれた蜘蛛の旗が掛かっているとの事ですっ』
『何だと⁉ 『八獄の郷』の旗だけではなく『義死鬼八束脛』に独立愚連遊撃騎士団『アヴァロン・オルドル』の旗もあるではないかっ』
『大陸でも最強と言われる傭兵集団が二つも雇われるとはっ』
『報告‼ 一大事です!』
『何事だ⁉ 『八獄の郷』の軍が東から北から龍が王都に向かって攻めている事は聞いているぞっ』
『南から、り、りりゅうが攻め込んで来ましたっ!』
『何を言っている‼ 北から攻めているの間違いであろう?』
『北から攻めているのとは別種の龍との事です。何でも口から光線を吐きながら王都に攻め上がっているとの事です。南部に駐屯している軍団が足止めしようとしましたが、瞬く間に壊滅しました!』
『壊滅だとっ⁉』
『南部には他国の侵攻に備えて精鋭軍を配備していた筈だぞっ』
『それが壊滅した。何かの間違いだろうっ⁉』
『確かな情報です』
『『・・・・・・・』』
『皆、落ち着け』
『陛下』
『東の『八獄の郷』の軍は東部に配備している軍団で上陸させない様に足止めさせよ。その間に文官を向かわせて軍を退くように交渉するのだ』
『成程』
『それは良い案ですな』
『カンタベル。文官の中で一番弁が立つ者と向かわせろ。条件としてはこちらは幾らか譲歩しても構わん。何としても軍を退くようにさせろっ』
『良いのですか? それでは国益にならないと思いますが?』
『龍二匹に攻められ国が亡ぶことに比べれば、その程度の損害など安いものだっ』
バンと何かを叩く音が聞こえた。
その後はどの軍を動かして防衛するかとか、いっその事王都まで軍を撤退させて戦力を集中させた状態で防衛するかと意見が出ていた。
う~ん。皆頑張っているな。それにしても東の方は『八獄の郷』の軍だけではなくてダイゴクと村松さんも部隊を出しているようだな。
僕が捕まったからダイゴク達も参加しているんだろうな。何か申し訳ないな。
村松さんの場合は義理か面白そうだからなのかは分からないな。
『では、王都の近衛軍団を北に向かわせ、西部に駐屯している軍団を南に向かわせると』
っと考えている間に、話が進んでいたな。
『そうだ。そうすれば龍には対抗できるだろう。近衛軍団は最精鋭で構成された軍団。また、西部に駐屯している軍団は対大型魔獣装備を配備している。これなら龍にも負ける事は無い』
『流石は陛下です』
『では、早速西部に伝令を』
『報告‼ 西部に駐屯している軍団から伝令です。西部から魔人族が大量に攻め込んで来ているとっ』
『『何だとっ⁉』』
『何故、西部に魔人族が攻めて来るのだ⁉』
『分かりません‼ ただ、攻めて来る魔人族はあまりに強いので増援を求めていますっ』
ジャストタイミングという感じで姉さん達が攻めて来たな。
なるべく、非戦闘員には手を出さない様にして欲しいな。
『それと、未確認ですが。その魔人族の先頭にはぎ、ぎ、ぎゃ・・・・・・』
『ぎゃ? 何だ? ハッキリ言わんかっ』
『『虐殺者』が先頭に立って暴れていると情報が入っておりますっ』
『『『何だと⁉』』』
『有り得んっ。もうあ奴は戦場に出なくなって何十年経っていると言うのだっ。誤報だ⁉』
『しかし、見た事がある兵士がそう叫んだという報告が』
『あ、ああ、ありえない・・・・・・』
何か母さんの異名を聞いた途端、ハノヴァンザ王国の人達が凍り付きだしたな。
母さん。この国でも何かしたの?




