閑話 面白い
今回はユエ視点です
「ふぅ、やれやれ。ようやく暇になったか」
早くノブの所に顔出そうと思ったのだが、まさかこんなに時間が掛かるとは思わなかった。
会長職自体は嫌いではないのだが、休みたい時はわたしの代わりに仕事が出来る奴を見つけるべきかもな。商会囲っている職人達のオーダーメイドのわたし専用の馬車に揺られながらそう思っている所に。
「いやぁ、公都から副都って地図で見たら近いけど実際に進むと結構距離を感じるね~」
そうわたしに話し掛けるのは長年の盟友であるセナだ。
わたしが副都に行くという話を何処からか聞きつけて『休暇を貰ったから行こう』と言って来た。
断っても良かったが、後でどうして断ったのか追及して来そうだったので渋々同行してもらう事にした。
「ねぇ、チャンチャン」
「セナ。その呼び方は止めろと言っているだろう」
「いいじゃん。この馬車にはわたしとチャンチャンしかいないんだから」
「それを言うのなら、ディアネンと呼ばれるのも好きではないのだからな」
「とか言って、本当は嬉しいくせに」
ニヤニヤしながら肘でわたしを突っつくセナ。
昔からこいつとは何故か馬が合った。
席が隣同士だったからか、セナが良く話しかけて来た。
わたしは面白い話とか無縁な生活をしていたので、どうもセナの聞いていると笑える話を聞いていると面白いと思いつい聞き入ってしまう。それで何時の間にか親しくなっていた。
実は隠れアニメオタクだという事も親しくなった一因かもしれない。
まさか、こっちの世界にまで付いて来るとは思わなかったがな。
「? どうかしたの?」
「何でもない」
こういうのも腐れ縁というのだろうな。まぁ、悪くは無いな。
だが、それと恋は別だ。
何とかしてこいつとマイにバレない様にノブと結ばれる様にしなければ。
ただでさえ、ノブの身内に敵が居るのに加えて最近では昔の部下でリリムだけではなく椎名まで合流したと副都支店の情報が入っている。
まさか、椎名が生きていたとはな。ふん、あやつの執念深さを見誤っていたぞ。
だが、椎名は敵ではあるが、まだ利用できるし手を組む事は出来る。
問題はリリムだ。あいつは駄目だ。不倶戴天の敵という言葉で当てはまらない位に癪に障る奴だ。
ノブの目が無い所で出会ったら殺し合うだろう。
わたしとマイと椎名はそうなのだが、不思議な事にセナだけは仲良くしている。
セナは『チャンチャンとリリ姉は似た者同士だから嫌い合うんだよ』と言う。
つまりは同族嫌悪という事だ。そう言われると納得は出来たが仲良くする事は出来ないと断言出来た。
それに手強いライバルが居るというも悪くはない。
セナもマイも友人なので敵に回したくないという思いがある。
なので、純然に敵に出来る奴がいると言うのは悪くない。
その内に完全に負かすつもりだしな。
「何か悪だくみしている顔をだけど、何考えているの?」
「別に何でもないぞ」
「まぁいいか」
いかんな。顔に出ていたか。
ふふ、久しぶりにノブに会えるからか気持ちが高ぶっているのだろう。
やれやれ、千年経っても恋は冷めないのだな。
初恋なら余計にそうかもな。
数時間後。わたしは副都に着いたのでノブの店に行ったのだが、其処でノブが誘拐されたという話を聞いた。
次回も閑話でセナ視点です




