第45話 う~ん、まさかこうなるとは
初めて魔法を使った日の翌日。
僕は今、アスクレイ侯爵の屋敷の一室にいる。
原因は僕の魔法だ。
訓練用に作られた部屋の壁を壊した威力を見て、上層部は僕が魔法を制御できるまで、侯爵の屋敷に隔離される事になった。そう言われた僕は即日、侯爵の屋敷に送られた。
荷物といえる物がないので、ほぼ身一つで屋敷に行った。
自分でいうのもなんだが、まさかあんな威力を持っているとは思わなかった。
恐るべしは、子供の頃に考えた魔法!
そんな訳で、僕はお茶を飲みながら、魔法制御の特訓をしている。
と言っても、そんな難しい事をしているわけではなく、ピンポン玉くらいの大きさの魔法の玉を生み出して、その玉を掠ることなく輪っかの中に通したり、急加速から急停止、急加速のまま部屋の中を動かし続ける等している。
言うのは簡単だが、意外にすると難しい。
上手くいく時もあるけど失敗する事もある。どちらかと言えば、今の所、失敗が多い。
今も、魔法の制御中だが、どうも上手くいかない。
「・・・・・・っ」
魔法の玉を加速して、輪っかに連続して通そうとしているのだが、輪っかの大きさが段々小さくなっていくので、どうも中盤頃になると掠ってしまう。
掠ったら、最初からやり直しだ。
なので、集中、集中。
集中したおかげで、今の所、輪っかを掠る事はない。
玉は順調に進んで行き、最後の方まで来た。
(これでっ!)
そう思ったのがいけなかったのだろう。
後もう少しで、全部通過できるという所で、輪っかに掠った。
ちなみ、この輪っかは触れるとキーンッと甲高い音出すので、掠っても音が出る仕組みになっている。
「あ~、後もうちょっとだったのに・・・・・・」
肩を落とす僕。
「まだまだね。子豚」
部屋の隅で、僕の特訓を監督しているエリザさんが声を掛けてきた。
何でも、僕の魔法の特訓に手を挙げてくれたらしい。
そんな訳で、エリザさんの指導を受けている。
「子豚、最後の方気を抜いたでしょう? だから、掠ったのよ。魔法を使う際は最後まで気を抜かない事、これを肝に命じて起きなさい。そうじゃなかったら、死ぬのは自分なのだから」
「はいっ!」
「返事だけは良いわね。まぁ、こんな簡単な事は直ぐに出来るように頑張りなさい」
うん、皆も今頃頑張っているだろうから、僕も頑張らないと。
拳を握りやる気をだす。
特訓を続けようとしたら、何処からかジリリリリリッという音が聞こえだした。
エリザさんは部屋の隅に行って、音を出している物を止めた。
「はい、休憩時間になったから、休憩にしましょう」
「まだ、大丈夫ですけど」
昨日みたいに疲れた感じがしないので、もう少し続けたい。
「駄目よ。魔力を使うのは、子豚が思っているよりも疲れるのよ。特に子豚みたいに初めて魔法を使えるようになった者は特に注意しないといけないの。気が付いたら、倒れてたとかよくあるのよ」
そう言われると、一理あるな。それにエリザさんは魔法の専門家だ。
素人が下手に行動するよりも、専門家の意見を聞いてしたほうがいいだろう。
「分かりました」
「聞き訳が良いわね。じゃあ、子豚行くわよ」
僕はエリザさんに連れられ、特訓に使用している部屋を出る。
エリザさんに連れられたのは、前に一緒に食事をした部屋だ。
「あの、休憩をするんですよね?」
「そうよ」
エリザさんは、前に座った所に座る。
「早く、座りなさいよ。グズなんだから」
エリザさんはそう言って、自分の隣の席に来るように、その椅子を叩く。
そこに座れという意味だろう。
別の所に座ろうにも、そこ以外椅子がない。
なので、そこに座るしかない。
僕が座ると、入って来た扉からメイドさん達がカートを押して入って来た。
カートには、イギリスのティータイムのように、お菓子がスタンドに載っている。
「わたしが作ったお菓子だから、豚の様に食べなさい。子豚」
見た目は美味しそうな菓子だったので、僕は手を伸ばした。
休憩を終えた僕は、魔法の特訓をお昼ご飯まで続けた。
お昼ご飯の後は、休みを当てられたが、エリザさんが買い物をしたいと言うので、僕は荷物持ちをしろと言われた。
世話になっているので、僕はその任を快く引き受けた。
買い物が終ると「お駄賃よ。子豚」と言って僕に王都を案内してくれた。
夜になる頃には、屋敷に戻った。




