閑話 謀議
今回は短くて第三視点です。
『八獄の郷』のカミノサラ家の領都『当鏡』
其処の客人用の屋敷には数人の人間族の男達が居た。
彼らはハノヴァンザ王国から使者だ。
彼らは『八獄の郷』と同盟を結ぶ為に来た事になっているが、本当はそれだけではない。
「諜報部が手に入れた情報は本当なのだろうな?」
「確認を取った。百%本人だそうだ」
「そうか。では、そちらに丁重にお連れするのだぞ。くれぐれも傷をつけるなよ」
「分かっている。しかし、あの方の命令とは言え誘拐をするとは」
「馬鹿者。誘拐ではない。勝手に国を出たのだから強制帰国させるだけだ」
「物は言いようと思うがな」
男達は何かを見ながら話をしていた。
その何かはよく見ると、似顔絵が書かれている紙であった。
驚いた事にその紙にはシャル達三人の母親のリリーの似顔絵が書かれていた。
リウイ達と顔を会わせているリリーよりも似顔絵の方が少し若く描かれていた。
「それに関連する事だが、どうやらその人物には子が三人居ると情報が入っている」
「なにっ⁉ という事はあの方の」
「姪っ子という事に成る」
「それについての指示は?」
「これもその人物と同じく丁重にお連れする様にとの事だ」
「了解した。しかし、国外逃亡して数十年か」
「時間が掛かりはしたが見つける事が出来たのは幸運と言うべきだろう。これも女神のお導きだ」
「そうだな。で、その子の顔は」
「これだ」
そう言って男は三枚の紙を出した。
その紙にはシャル、二コラ、ジェシーの三人の顔が書かれていた。
「お前達はこの似顔絵に書かれている者達を連れて来るのだ。良いなっ」
「「「了解っ」」」
返事をした男達は部屋から出て行った。
部屋に一人残った男は似顔絵を見ながらポツリと零した。
「まさか、本当に生きているとは思わなかったですよ。リリー様」
男は嬉しそうなやるせなさそうなという複雑な顔をしていた。




