第44話 魔法は使えるから、少し練習しよう
魔法を使えるようになった翌日。
僕は肩に烏の姿になっている女神様を連れて、魔法の訓練室に向かう。
起きて早々、向かったのでまだ誰も居ない。
「誰もいないし、これなら魔法の練習にもってこいだな」
『汝、どのような練習を行うのだ?』
女神様が聞いてくると言う事は、どんな事をするのか興味があるようだ。
と言っても大した事はしない。
まずは、魔法を使うには何が大事なのか知って、その後子供の頃に考えた魔法を使えるか試したいだけだ。そう試したいだけだ。重要なので二回言います。
「じゃあ、魔法を使いたいけど、どうしたら良いのかな?」
『頭の中でイメージせよ。そうすれば、魔法を使えるようになる』
女神様のアドバイスを聞いて、僕は目をつぶり思い描いた。
(集中、集中、イメージしたらいいんだな。まずは何を思い浮かべよう)
頭の中で色々と考えて、一番イメージしやすい火をイメージする事にした。
燃え盛る火を頭の中でイメージした。
すると、手の平から炎が生まれた。
「おわっ⁉」
火力はそれほどではなかったが、いきなり燃え上がったので驚いて、尻餅をついた。
『だらしない。それでも汝は男か?』
そう言われては、何も言えず頭を掻く。
でも、これで魔法を使えるだろう。
一応、使える魔法全て使えるか試した。
結果、全部使える事が分かった。
「ふぅ、意外に魔法って使うと疲れるんだ」
僕は額に浮かんだ汗を袖で拭う。
『魔法を行使すると、魔力を使うからだな。汝は異世界人の中でも魔力量が多い方だぞ』
「聞いてもいいですか」
『何ぞ?』
「魔力って何?」
魔法を使う際に必要な力なのは、言葉から分かる。
だが、その魔力とは何ぞやと思う僕。
『汝にも分かりやすく言うと、この世界に漂う魔素を取り込むことで使える力だ』
「魔素?」
『少し待て。汝にも見えるようにしてやろう』
そう言って女神様の目が光りだし、この部屋を良く分からないものが覆いだす。
すると、先程まで見えなかった。青い球体のようなものが見えてきた。
『今、汝の目には青い球体が見えるであろう。それが魔素だ』
「これが・・・・・・・」
『この魔素とはこの世界が作られた際の余剰エネルギーと言うものだ。故に至る所に存在する』
世界創造で出来た余剰エネルギーが魔素か。
何か凄いな。
(あの漫画の根源の到達もここから考えられたのだろうか?)
なんとなくだが、そんな気がする。
「まぁ、今は魔法を使える事に喜ぶか・・・・・・」
これで、子供の頃に考えていた魔法を使える事が出来る。
今でも一字一句しっかりと覚えているのだ。
「じゃあ、さっそく――――『炎よ、万物を消滅せんとする力よ。我が右手に宿れ』」
右手に炎の玉が浮かぶ。
「出来た。次は―――『水よ、万物の源よ。生命を癒やす力よ。今はその力を万物を凍らせる力となりて、我が左手に宿れ』」
左手に氷の玉が浮かんだ。
この詠唱は正直言ってかなり痛い。
「よし! あとはこれを『炎よ、水よ。相反する力よ。今ここに二つを一つのせん!』」
僕は右手と左手を近づけけ、手に浮かんだ魔法を合わせる。
最初反発していたが、段々と二つの力が交わりっていく。
そして二つの魔法が一つの魔法になった。
赤い炎と青い水魔法が合わさった事で、無色の玉になった。
「で、出来た・・・・・・」
これで僕も某賢者の最終奥義を会得したぞ!
『何ぞ、その魔法は・・・・・・・』
女神様も初めて見るのか、見開いた目で僕の魔法を見ている。
「これですか。まいっと、こう言っても分からないだろうから、凍る力と燃える力を合わせて作ったものですよ」
『信じられん、神でさえ、そのような事を思いついた者がおらんのに、お主の世界は魔法がないのにどうやってそのような魔法を考え付いたのだ?』
漫画からと言っても通じないだろうし、何て言えばいいのだろう。
少し考えて、こう答える事にした。
「頭の中で思い浮かんだ事をしただけですよ」
『・・・・・・一度、汝の頭の中を覗いてみたいものだ』
僕、解剖されるのかな?
いや、この場合、漫画だと手を頭に当てて頭の中にある物を見るのかもしてない。
出来れば、痛い事はしないで欲しいな。
『所で、もう終わりか? まだ試したい事はないのか?』
そう言われて、僕はもう一つだけ試したい事があったので、する事にした。
「では、早速、――――『常闇より生まれし力よ、神聖なる光より生まれし力よ、ここに集え』」
白い玉と黒い玉が出来た。
「『全てを闇に帰す力よ、全てを光に導く力よ。二つの力よ交わりて混沌となれ』」
白い玉と黒い玉が交わって、ゼブラ色の玉になった。
「出来た。名付けて『混沌波動砲』だ」
流石、子供時代のの僕。よくこんな事を思いつくものだ。
ちょっと威力がどれくらいなのか試したいので、何処かに的がないか探した。
直ぐにダーツで使う的みたいなものが見つかり、それに魔法をぶつけてみる事にした。
「よし、いけっ!『混沌波動砲』」
僕がそう言うと、同時に部屋のドアが開いた。
「いたいた、ノッ君、こんな所で何をしているの?」
「ノブ、一人で魔法の練習なんぞしなくても、わたしたちを呼べばいいだろう」
「猪田君、おはよう」
マイちゃん達が入って来た。
「あ、三人共、おはよう」
僕は三人に注意を向けてしまったせいで、魔法がとんでもない事になった。
僕が唱えた魔法は的に向かって、ビームのように直線になって飛んで行った。
的を貫き、壁を貫いていく。
やがて、魔法が段々と小さくなっていく。
完全に魔法が消えると、壁を無くなり外が見えていた。
外の日が部屋に差し込んでくる。
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
マイちゃん達は唖然とした。
僕も自分で作った魔法の威力に言葉が出なかった。
『ふむ、凄まじい威力だ。汝は凄いな』
女神様の声がやけに響いた気がする。
「・・・・・・ノ、ノッ君が、なんかとんでもない魔法をつかっちゃた」
「これは、また凄いな」
「素敵。こんな魔法も使えるなんて、益々好きになってしまうわ」
椎名さんが頬を赤くするのも、気にならないくらい、とんでもない魔法を作ってしまった。
僕は直ちに、この事を侯爵に行って謝罪した。
侯爵はその話を聞いて、直ぐに現場に向かい調査しだした。
何か調査している間「素晴らしい、素晴らしい。やはり、わたしの見込んだ通りの者だ! この部屋は大抵の魔法では破壊できないように設計されているのに、それをいとも簡単に破壊するとは、まったく素晴らしい逸材だ‼ これは例の計画を実行しなければ・・・・・・」とか言っていたな。
僕が魔法の訓練室を破壊した話は瞬く間に広がり、皆、僕をヤバイ人を見るかのような目で見て来るようになった。
自分でした事とはいえ、ちょっと心が痛かった。




