第47話 生まれて初めて言われた。
令和初めての投稿。
今年で拙作が始まって二年になります。
今後ともよろしくお願いいたします。
「う~ん。あの子がこんなに可愛い子を産むなんて想像もしなかったわっ。ん~、っちゅ、ちゅ」
アイライ御祖母さんは僕を抱きしめながら頬にキスをする。
鬼人族なんだろうけど、凄く若く見えるな。
御祖父さんよりも若く見えるな。正直に言って御祖父さんの娘と言っても通じそうだな。
僕を飽きる事なく抱き締めながらキスをするアイライ御祖母さん。
それを見て、一番長身の女性がアイライ御祖母さんに近付く。
「御祖母様。そろそろ、わたし達の紹介をしたいのですが」
「そうね。忘れていたわ」
アイライ御祖母さんは名残惜しそうに離れる。
「初めまして、リウイ君。わたしはノイカ。貴方の従姉よ」
この人がノイケさんか。確かレイア叔母さんの長女だったな。
ふむ。話し方から四人の中で一番理性的で話が通じそうな人のようだ。
「初めまして。リウイです」
「ふふ、ちょっと顔が汚れ過ぎね」
ノイカさんは懐からハンカチを出して僕の頬を拭う。
そうする所を見ると、どうやらかなり口紅が付いていたんだろう。
「これで良し。ふふ、でも御祖母様が可愛いと思うのも無理はないわね」
ノイカさんはハンカチを懐に仕舞うと僕の頭を撫でる。
ふむ。僕が今まで接して来た姉さん達とは違う姉さんタイプの人だ。
僕の周りの姉さんは過保護な人が多かった。
「ノイカ。早くわたしも紹介させてよ」
「ああ、ごめんなさいね」
ミズホ叔母さんにそっくりの人がノイカさんにそう言う。ノイカさんは頭を撫でるのを止めて離れた。
そして、その人が僕の前に来て笑顔を浮かべる。
「初めまして。わたしはアンジュよ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
予想通りこの人はミズホ叔母さんの長女だった。
「う~ん。可愛いわね~」
そう言って僕を抱き締めるアンジュさん。
ああ、この人もミズホ叔母さんと同じ性格か。抱き締められながらそう思った。
「お姉様。可愛いのは分かりますけど抱き締めるのは後にして下さい」
そう言って姫カットの女性が僕とアンジュさんを離した。
「あ~ん。アユラのいじわる~」
アンジュさんが唇を尖らせる。
そうか。この人がアユラさんか。
「初めましてリウイ君。わたしはアユラ。ミズホ母様の次女で貴方の従姉よ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
アユラさんが頭を下げるので僕も頭を下げる。
ついでとばかりに最後に残った子がアユラさんの傍に来る。
「初めまして。わたしはナギサ。よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
「わたし今年で十四歳。リウイは?」
「十五だけど」
この子僕よりも年下なのか。
「じゃあ、わたしのおにいちゃんなんだ。よろしくね。リウイお兄ちゃん!」
笑顔で僕の事を「お兄ちゃん」と言うナギサ。
言われた瞬間、衝撃を受けた。
何と言うか嬉しいような悲しいような、それでいて何かが砕け散る感覚だった。
生まれて初めて「お兄ちゃん」って言われた。




