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閑話 祖父の胸中

 今回はカリショウ視点です

 少し前にセクシャーナトが屋敷にやって来た。

『貴方の孫にあったけど会いたい?』

 と言いおった。

 儂の娘達は長女を除けば皆会おうと思えば会える距離に居る。

 孫も同じだが、例外がなのは長女とその息子だけだ。

 娘達がいる魔国はかなり遠く、我が国とは交流といえるものが少ない。

 仮に会いに行っても娘が会うのを拒否する可能性もある。

 家を出る前に派手に喧嘩をしてから出て行ったからな。

 なので、向こうが会いに来ようと思わない限り会える事はない。

 一生娘のハバキとその孫の顔を見る事はないと思っていた所にセクシャーナトがそう言うので、儂は訊ねた。

『どうして、孫がこの大陸に居る?』

『聞いてみたら王位継承権を破棄してこの大陸に来たんですって。で、当分はこの大陸で暮らすそうよ』

 ニコニコと笑うセクシャーナト。

 こいつがこの様に笑う時は何時も何かしら企てている時だ。

 昔からこいつの悪だくみに。こいつの夫ともに付き合わされて酷い目にあった。

 まぁ、それで結婚するのだから世の中解からぬものだ。

 そんな事よりも、今は孫の事だ。

『会いたいと言えば会わせてくれるのか?』

『勿論』

 断言するセクシャーナト。

 真面目な顔をしておるから、信用しても良いだろう。

『では、任せた』

 そう言ってから数週間後。

 まさか、こんなに早く会えるとは。

「ほら、リウイ君。ご挨拶なさい」

「は、はじめまして。リウイです。……お祖父さん」

 儂はリウイの顔をジッと見た。

 蒼銀色の髪に白哲の肌。額から見える赤い角。

 顔立ちは幼い頃のハバキにそっくりであった瓜二つと言ってもいいだろう。

 まさかここまで似ているとは。男の子は母親に似ると言うが本当だな。

 儂がジッと見ていると、リウイは苦い顔をする。

 周りからも何故か疑念を持った目で見られていた。

 何故と思い考えたら、リウイが名乗ったのに儂は名乗っていない事に気付いた。

「オホン。ラサツキ家当主カリショウ・ラサツキじゃ」

 儂が名乗ると周りの者達はほっとした顔をした。

「当分の間お世話になります。この国の事はあまり知りませんので、目に余る行為を行っていましたら遠慮なく叱っても構いませんので、どうぞよろしくお願いします」

 そう言って一礼するリウイ。

 礼儀が行き届いている。本当にあのハバキの息子か?と思えた。

 あの子は礼儀作法などは『そんな面倒な事をしていられるかっ』と言って教わるのを拒否していた。

 なので、まだ若いとは言えもっと無礼な態度を取るのではと思っていた。

 この国を離れている間、あの子も成長したようだ。

 そう思うと、胸にこみ上げてくるものがあった。

 いかん。そう思うと目に涙が。

「後は任せたぞ。レイア」

 末の娘にそう言うと、儂は一足先に屋敷へと入り自室へと駆けこんだ。

「……おおおおおっ、あのらんぼうでじゆうほうぽうなあのこが、こどもにあのようなれいぎをおしえるとは、ちちはうれしいぞ、はばきっっっ⁉」

 部屋に入ると儂は号泣した。

 明日、妻と他の孫たちも帰って来る。一席設けるとしようと涙を流しながら思った。

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