第44話 御祖父さんとご対面
レイアさんに頭を撫でられていると、ふと思った。
どうして、この人達は僕の名前と正体を知っているのだろう?と。
もしかしてと思い、セクシャーナトさんに目を向けると。
「ふふふ、上手くいったわ♪」
当の本人はドッキリ大成功した顔をしていた。
これはもしかして、事前に僕の事を話していてそれで此処に僕達が通る事を教えていたな。
それで僕を馬車の外に連れ出しんだな。これは一杯食わされたな。
まぁ、それはいいとしよう。
「他に人は居るのですか?」
叔母さん達が居るのなら御祖父さん達も居るのではと思い周囲を見る。
「い~え。わたし達以外、誰も来てないわよ」
「お父様。いえ、貴方の御祖父様達は『柱雷』の屋敷に居るわよ」
「じゃあ、この町に居るのは叔母さん方だけですか?」
「そうよ」
何時の間にか近寄って来たミズホ叔母さんは僕の抱き締める。
「う~ん。男の子ってこんな感じなのね。お父様も喜ぶでしょうねっ」
「そうですね。お父様もそう思っているでしょうね」
どういう意味だ?
その事を聞こうとしたら、ミズホ叔母さんは有無を言わさず僕を抱き抱える。
「じゃあ、そろそろ馬車に戻りましょうか」
「ええ」
「分かりました」
三人は馬車へと向かった。
それは良いのだけど、どうして僕は抱えられているのだろう?
それからは、『柱雷』につくまでの間、ミズホ叔母さんに弄られもとい可愛がられていた。
皆は初めての叔母と甥のご対面という事で最初は好きにさせていた。
そんな体を取っているが、実際は係わると面倒そうだから僕に押し付けている。
ジェシーなんかさっきから目を合わせてくれない。
レイア叔母さんは苦笑いして何もしないし、セクシャーナトさんは悪乗りして僕をミズホ叔母さんと一緒に僕を揶揄う始末。
ようやく『柱雷』に着いた頃には別の意味で疲労した。
門番の検問などはしないで通してくれた。理由は馬車に乗っているのがセクシャーナトさん達と分かったからだ。
門を越えて都に入った。
窓から外の風景を見ると、馬車が進む道を人だかりが出来ていた。
セクシャーナトさんが来るのが珍しいのか。それとも来る事自体が珍しいのかは分からないが、とにかくかなり目立っていた。
馬車の一団はそのまま進ませていくと、デカい屋敷の前まで来た。
いや、この大きさだと屋敷も豪邸という言葉でも足りないな。城館と言うのが一番のしっくりくる大きさだな。
馬車から降りて城館の中に入ったらズラリと人が並んでいた。
使用人だけではなく武官、文官の人達も並んでいた。
これだけ多くの視線の中を歩くのはちょっと気後れするな。
後退ると、後頭部に何かや柔らかい物が当たった。
何だと思いながら振り返ると、そこに居たのはレイア叔母さんだった。
「さぁ、リウイ君。中に入りましょう。貴方を出迎える為に皆は並んでいるのだか」
そう言われてもな。
なおも躊躇っていると、クスっと微笑んだレイア叔母さんは僕の手を取り引っ張っる。
手弱女の様な指で細い腕なのに僕を引っ張るとはこの人も鬼人族なんだと思いながら引っ張られる僕。
叔母さんに引っ張られていると、屋敷の玄関の前に人が立っていた。
良い生地を使った藍色の着物風の服を着て、立派な口髭を生やしていた。
髪も髭も白に近い銀色であった。
額に三本の角が生えていた。鷹の様に鋭い目付き。藍色の瞳。精悍な顔立ち。
服で隠れているが鍛えられた身体をしているのが分かる。
その人を見た瞬間、何となく分かった。この人が誰なのか。
確認の為に、僕は手を引っ張るレイア叔母さんに訊ねた。
「あの人が?」
「そうよ。わたし達姉妹の御父様で貴方の御祖父様であるカリショウ・ラサツキよ」
予想通り、僕の御祖父さんだった。




