第42話 ご対面の前に家族紹介を聞く
セクシャーナトさんと共に『柱雷』へと向かう。
馬車に揺られながら、僕はセクシャーナトさんから『八獄の郷』が出来た経緯を聞いた。
「元々鬼人族の領土は国というよりも『鬼人族九大氏族』がそれぞれの領地を持った寄り合い所帯みたいな感じであったんだけど、千年前に異世界から来た渡来人達の知識を得て考えを改めたそうよ」
ああ、そう言えば前世で使者として鬼人族の領地に来た時に民主制の事を話した事があったけ。
当時の何と言う家だったかは忘れたが、その家の当主がその話を聞いていたく感銘を受けていた。
「各家の当主達との話し合いの結果。最強の者が国の主になれば良いという事になって、四年に一度『鬼人族九大氏族』の各家から出た代表を戦わせて最後まで生き残った代表の家が『八獄の郷』の頭領となるの」
「と言う事はその頭領という者が他の国で言う王様みたいな感じですか?」
「少し違うわね。我が国は合議制だから、どちらかと言えば合議で一番発言権を持っていて合議を纏める議長という感じね」
四年に一度ってオリンピックみたいだな。いや、どちらかと言うとG〇ンダ〇の世界観が国法になった感じか。
でも、その説明を聞いて納得した。僕の家は王族みたいな家と言っていたのが分かった。
「僕の家ってその代表選で何度か勝った事があるのですか?」
「そうね。結構あるわよ。ハバキちゃんが家に居た時は何度か出て優勝した事もあるから。その事から『鬼人族で一番の強者と言われていたわ」
つまり母さんは鬼人族の中で一番強い鬼人という事か。
「か、母さんがそんなに強い人だったとは初めて知った」
「あら? 貴方には故郷の事は話さなかったの?」
「前に『古臭い因習にうんざりしたから家を出た』としか言ってなかったので」
「古臭い因習ね。ふふ、あの子らしい言い方ね」
愉快そうに笑うセクシャーナトさん。
「じゃあ、貴方には自分の家族の事も言ってないでしょうね」
「はい」
少なくとも母さんが生まれたという事だから、母さんの両親つまり僕にとっては御祖父さんと御祖母さんが居るという事だ。
「貴方のお爺さんはカリショウで、御祖母さんはアイライ。ハバキちゃんは長女でその下に妹が二人いるわ。次女がミズホ。三女がレイアと言うのよ」
「どうも教えて頂きありがとうございます」
正直に言って母さんがあれだけぶっ飛んだ人だからな。その母と妹達と言う事だから、それなりにいやかなりぶっ飛んでいると考えるべきか?
それとも逆にそんな姉を見て大人しいと取るべきか? どっちだろう。悩むな。
とりあえず言えるのは、何があっても大丈夫なようにしよう。




