第43話 遂に魔法が使える! 条件付きだけど
『驚いたか? まぁ、仕方がない。人間が我の声を聞くことなどないからな』
「いや、驚きはしましたが。それよりも・・・・・・何でその姿なんですか?」
契約の時に会った時は、霊体だったけど女性の身体をしていたのに、今は何故か烏の姿になっていた。
『天界から人間の世界に下りる際、代わりの肉体が必要でな、これが下界での我の姿だ』
成程、依り代みたいなものか。
「それで女神様が僕の前に来たということは」
『察しの通り、汝らに魔法を授ける』
よしっ! これで魔法を使える事が出来る。
「それで、契約の代償は何ですか?」
柄にもなく、鼻息荒く女神さまに詰め寄る。
『そう慌てるな。今言うから、少し落ち着け』
おっと、少し興奮したようだ。
深呼吸して落ち着こう。
「ふぅ~、失礼しました」
『うむ、我は寛容ゆえ許す。それで代償だが、汝にだけ課す」
「僕だけですか?」
『左様。汝が代償を払えば、汝ともう一人の契約者に魔法を授ける』
僕だけなのが気になるが、それだけこの女神が授ける魔法は強力ということだろう。
思わず、生唾を飲み込んだ。
「それで、代償は?」
『うむ。代償は・・・・・・・・・』
溜めるな。それだけ代償が重いということだろうか?
僕一人で代償を払えるだろうか。
何だか、不安になってきた。
『代償は、我を楽しませろ』
「楽しませるですか?」
『左様。笑わせるでもよい、美味い物で食べさせるでも良い。劇を見せるのでもよい。何をしてもよい。兎に角、我を楽しませろ』
楽しませるか。範囲が広すぎて難しいな。
『ただし、条件が二つある。
一つは、我がこの姿になっている事を誰にも話さい事。
もう一つは、常に我が汝の傍にいる事だ』
最初の条件は良いけど、最後の条件ってそれはつまり、四六時中一緒に居ると言う事だろうか?
「あの、聞いてもいいですか?」
『許可する』
「最後の条件はつまり一緒に行動するととっていいですか?」
『そう解釈して構わん』
マジでっ、二十四時間常にこの烏が僕の傍にいるの。
何か、昔のアニメでそんなキャラいたな。
でも、あれは巫女さんだったかな?
「今の条件に従わないと駄目なんですよね」
『この条件に従えないなら、魔法の契約は無しだ』
う~ん、ちょっと困ったな。
僕はいいけど、マイちゃんが魔法を使えないのは問題あるだろうな。
でも、烏が僕の傍にいるのもちょっとな。
(まぁ、取って喰われる訳でもないから大丈夫か)
僕はそう思い、この条件を飲むことにした。
「分かりました。その条件を呑みます」
『では、跪くのだ』
僕は言われた通りに、その場で跪いた。
モリガンは飛んで、空中で静止した。
空中なのに、その場に足場があるかのように進み、僕の額に嘴で突く。
その瞬間、頭の中に文字ではない何かが、幾つも流れてくる。
見た事も無い文字だが、でもどこかで見た事がある気がする。
(英語じゃないし、ラテン語でもない。ギリシャ文字かな? 駄目だ。全然分からない)
そう考えていたら、何時の間にか頭の中に流れて来るものが止まった。
『これで魔法契約は完了した。汝はもう魔法を使えるぞ』
そう言われて、頭の中から変な声が聞こえてきた。
『風魔法を習得しました』
『土魔法を習得しました』
『水魔法を習得しました』
『炎魔法を取得しました』
『光魔法を習得しまいた』
『闇魔法を習得しました』
沢山の魔法を習得したようだ。
僕はそんなに魔法を習得して何ともないのか気になり、手を握ったり開いたりした。
それで、どこも異常がないと分かった。
「これで魔法を使えるのか。何か、あっけないような」
『お主は習得したら『こ、これが、魔法なのかっっ、素晴らしい。世界は力で溢れている』とかいう性質か?』
「何で、そんな恥ずかしい事を言わないといけないのですかっ⁉」
『前に契約した者が、そんな事を言って居ったからな」
その人はこの世界の人だろうか? それとも僕達と同じ異世界から来た人達だろうか?
どっちにしろ少々痛い人のようだ。
「契約して思ったけど、魔法名とか、詠唱とかないんだ」
『魔法名? 詠唱だと? そんなものは、皆個別に作る』
「えっ⁉ 個別に作る!」
『同じ威力を持っている魔法でも、扱う者によっては、詠唱も魔法名も違うのだ』
つまり 、僕が『ファイヤーボール』という魔法を唱えても、別の人は僕と同じ魔法を唱えても『ファイヤーボム』になるかもしれないと言う事か。
(統一感無さすぎだろう。でも、これはこれでいいのか)
魔法名なんて、別に個人で好きにつければいいものだ。そうゆうのが、何か男心をくすぐるのだろう。
(僕も個別に魔法名と詠唱を作って、唱えれるのか。じゃあ、子供の頃に作った魔法も使えるっ⁉)
まだ、少年といえる時に作った魔法が、今この時使えるなんて感無量だ。
子供の頃を思い出すな。必死に魔法の詠唱を考えて、それをマイちゃんの前で言ったりしたものだ。
あの時は、恥ずかしい黒歴史だったけど。この世界ではその魔法も使えるという事だ。
僕は俄然やるきがでてきた。
『代償の件,ゆめゆめ忘れるでないぞ』
も、勿論ですよ。




