第39話 手紙と何故か本人が来た
さて、どうしたものかと考えていると。ドアがノックされた。
「誰?」
『あっしです』
この声はダイゴクか。何かあったのかな?
「どうぞ」
『失礼します』
そう言ってからダイゴクはドアを開けて部屋に入って来た。
「若。御寛ぎの所にお邪魔して申し訳ありません」
「いいよ。別に。で、何の用?」
「はい。実は」
ダイゴクはそう言って、懐から封に入った手紙を出した。
また、手紙か。今度は誰だ?
そう思いながら、僕は封を切り、手紙を広げた。
「・・・・・・これはセクシャーナト様からの手紙か」
公国に入る前に居た都市で会ったからよく覚えている。
というよりも、母さんの師匠だったという事と性格がかなり強烈だったので覚えていると言うべきだろう。
話してみて思ったが、かなり頭が切れる上に面白そうという理由だけで、あの手この手を仕掛けて最終的には自分の思い通りにさせるのだ。本人の苦労などお構いなしに。
例えで言うのであれば、敵に回せば厄介で味方にすれば扱いがこの上ない程に面倒な人だ。
それで、手紙の内容を見ると。
『貴方のお爺様に非公式で会う手筈を整えたから会ってみない?』
と書かれていた。
ふ~む。御祖父さんか。
話は聞いているけど、どんな人なのか会ってみないと分からないな。
「リウイ様。手紙には何と?」
「御祖父さんに会ってみないかだってさ」
「それは宜しいのではないですか?」
「どうして?」
「リウイ様のお爺様に会えるという口実があれば、此処を離れても問題ないですよ」
「ああ、そうだね」
姉さん達が来る前にお祖父さんの下に行って、ほとぼりが冷めるまで居るというのも手だな。
僕に会うまで帰らないとか言い出しそうだけど、その時はその時で考えよう。
「よし。じゃあ、ダイゴク。直ぐに返信して」
「若。若のお爺様に会うという事は『八獄の郷』に行くんですかい?」
「そのつもりだ。その間の店はソフィーとリッシュモンドに任せる事にする」
「分かりました。じゃあ、行く事を伝えますね」
「ああ、頼むね。・・・・・・うん?」
伝えますね? どういう事だ?
この場合、返答の手紙を出しますねじゃないのか?
「ダイゴク殿。それはどういう意味ですか?」
「ああ、いえ。その手紙を持って来たのがセクシャーナト様本人ですから」
「ぶっ⁉」
書いた本人が届けにきたんかいっ。何で手紙を書くのやら。
「本人が来たのであれば、どうして手紙を書いて渡しに来たのですか?」
僕の愚問をソフィーが訊ねた。
「いや、あの方はどうも茶目っ気があるというか、こういう悪戯をするのが好きな御方でして」
頭を掻きながら答えるダイゴク。
その反応を見るに、ダイゴクも良く分からない人の様だ。
「・・・・・・まぁ、いいや。とりあえず、此処に連れて来て」
「承知しました」
ダイゴクは一礼して部屋から出て行った。
「ソフィー。僕が居ない間はリッシュモンドと相談して店を回してくれ」
この二人なら、僕が居なくても店を回す事は出来るだろう。
「畏まりました。リウイ様。其処で相談があるのですが」
「相談?」




