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閑話 王子様のよう

 今回はジェシー視点です

 頬が熱い。

 そして、さっきから胸が激しく高鳴っている。

 どうして高鳴っているのか分かる。わたしは胸が高鳴る原因を見上げる。

「? どうかした?」

「い、いえ、別に・・・・・・~~~」

 わたしは思わず顔を反らした。

 今、顔が真っ赤になっているのが見なくても分かる。

 今日、店に行く途中仕事で使う物を市場で買おうと思いながら歩いていると、横道から男の人が出て来てわたしの腕を掴まれた。

 其処からはいきなり目の前が暗くなった。逃げようと暴れたが、自分の顔に布を当てられた。

 その布の匂いを嗅いでいると、意識が遠くなった。

 意識が完全に消える前に聞こえたのは「悪く思うなよ。これも商売で必要な事なんだ」という男の人の声だった。

 それから暫くして、わたしは目を覚ました。

 目隠しをされているので、何処にいるのか今は何時なのかも分からない。

 分かるのは、手足も縛られて何処かの床に転がされているという事だけだった。

 これは、もしかしてわたしは奴隷になったの?と一瞬思った。

 だが、公国では正規の手続きをしていない奴隷は違法で、そんな事をしたら処刑される。

 わたしを捕まえたのがそんな事も知らない人なのかそれともそうと知っていてしている人達なのか。

 このままでは、一生家族に会えないのでは?という考えが頭をよぎった。

 直ぐにそんな考えを隅に追いやった。今は自分がどんな状況なのか分からないと何も出来ないと思ったからだ。そう思っていると、近くで錆びた蝶番が動く音がした。

 すると、足音が聞こえて来た。音だけでは何人かは分からないけど、複数の人達が居る事が分かった。

 その足音はわたしが居る所で止まった。

「この子で間違いないですか? 副頭」

「ああ、間違いな。俺が最近、気に入った女の一番下の妹だ」

「これで人違いだったらバレない様に返すのが大変でしたよ」

 男の声でそんな事を話しているのが聞こえて来た。

 その話しぶりから、どうやらわたしの事を知っている様であった。

「じゃあ、手筈通りに頼むぞ。上手くいけば、お前の給料は倍になるぞ」

「だと良いですけどね。……」

 男の一人がそう言って鍵を回す音をした。

 ガチャンという音がしたら何処かの扉が開いて歩く音が聞こえた。

「じゃあ、行ってきます」

「ああ、任せたぞ」

 男の人がわたしを担いで何処かに向かった。


 目隠しをされているので、何処に向かっているのが分からないがわたしを担いでいる男の足が止まると、男の人が「準備は良いか」と声を掛けると。

 複数の男の声で「応」と答えが来た。

 どうやら、此処で何かするようだ。

 そう思っていると、わたしの足を縛っている物が外された。

「ジッとしてろよ。まぁ、目隠しされているから逃げる事も出来ないだろうけどな」

 わたしを運んだ男の人とは別に声の男の声が聞こえて来た。

 そして、わたしの身体に何かを巻き付けた。

「これでよし」

「後はあいつらが来るのを待つだけか」

 あいつら? 誰の事だろう?

 そんな事を思いながら待った。

 その間、わたしは男の人達が言うあいつら?という言葉の事を考えた。

 この状況で一番可能性があるのは奴隷商人と思った。

 もしかして、奴隷にされて売り飛ばされるかもと思った瞬間、恐怖で身体が震えた。

 身体を震わせていると、向こう側から足音が聞こえて来た。

 誰?と思っていると。

「「「ジェシー‼」」」

「その声、姉さん達に、お母さん⁈」

「今助けるから、待ってなさいっ」

 母さんの言葉を聞いて、わたしは首を縦に振る。

「手紙に書いた者は持って来たか?」

 手紙? どういう意味?

「ああ。タイヤの製造方法とプラチナの加工方法をなどを記した物だ」

 お父さんの声だ。

 もしかして、それってリウイさんに教えて貰った事が書かれているのっ。

 わたしが捕まったから、お父さんが秘密の製造方法を記した紙を持ってきたという事⁈

 そんな、駄目だよ⁉

 そう思った瞬間、何か冷たい物が首に当たる。その恐怖で言葉が出なかった。

 そうしている間に話は進み、お父さんは製造方法を記した紙を何処に置いた。

 わたしは傍にいる男に人に背中を押された。

 おずおずと歩き出した。

 前に進んでいると、何となく気配があったので進んでいたら、何処からか蹄が地面を蹴る音が聞こえて来た。そして、わたしは持ち上げられて抵抗したら、持ち上げた人がリウイさんだという事が分かった。

 それから、わたしはリウイさんの腕の中に居る。

 名前は知らないけどケンタウロス族の人の背に乗っているので、まるで馬に乗っている気分だった。

 更にリウイさんの腕の中に居る。

 これではまるで、物語に出て来る白馬の王子様の腕の中に居る御姫様の様であった。

 女の子なら憧れてやまない光景に、わたしが居る事に恥ずかしくて嬉しいという思いであった。

 わたしはまたリウイさんを見上げる。

 今度は、わたしの視線に気づかなかったのか前を見ていた。

 その真面目な顔を見て頬がますます赤くなった。

 〝ママはね。お父さんと知り合っていく内に好きになっていったわ。そして、思ったの。この人なら何もかも投げ出して一緒になってもいいって〟。

 小さい頃からお母さんに聞かされた馴れ初め。

 お母さんは顔を赤らめながら言う。

 それを聞いて、わたしもいつかそんな人に出会うのかなと思ったけど、叶っちゃった。

 わたしは目をつぶりリウイさんの胸元に頭を預けた。

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