閑話 ラクロワド商会の凋落
今回は第三視点です
「で、では、これで失礼いたしましたっ」
と言ってデカス商会の店から男達が慌てて出て行った。
その男達の先頭で走っている者はラクロワド商会の手代であるデメミトリは必死な形相で走っていた。
(し、信じられねえ。何だってあいつ等が此処に居るんだよっ)
デメミトリは心の中で憤っていた。
先程、あったリウイと傍にいた者達の顔を見て恐怖していた。
実はデメミトリはダイゴク達に会った事がある。敵として。
彼は今でこそラクロワド商会の手代ではあるが。前職は傭兵であった。
傭兵団とまではいかない傭兵集団に所属していた。
そこそこ有名で食うには困らない程度の稼げていた。
ある時、デメミトリが属する傭兵集団がとある貴族の依頼を受ける事となった。
その依頼は他にも多数の傭兵集団を雇うという依頼であった。
多数の傭兵部隊を雇うという事は大仕事だと思い喜んだが、依頼内容を聞いて呆然とした。
ある道を進む集団を襲撃という依頼であった。
その話を聞いて、何と簡単な依頼だと、その依頼を実行する時までデメミトリ達は思っていた。
襲撃するその日。依頼主からあらかじめその集団が通る道を聞いていたので其処で待ち伏せをした。
ターゲットの集団が見えたのでデメミトリ達は一斉に攻撃を開始した
結果。デメミトリを含めた数人を除いて全員、倒された。
数の有利。地の利などあらゆる面で勝っていたのにデメミトリ達は負けた。
後に自分達が襲撃したのはダイゴク率いる『義死鬼八束脛』という事を知った。
この大陸でも『七強』と言われる傭兵集団。
そんな者達に襲撃したのだから命があっただけでも儲けだと思い、デメミトリは傭兵を廃業して真っ当に生きる事に決めた。
その努力の甲斐あって、今はラクロワド商会の手代になった。
デメミトリは急いで今日の事を報告しようと店へと走る。
その速さは部下達の誰も付いて行けない程であった。
デメミトリが店に着くと、店員に会頭が何処に居るか訊ねた。
店員の口から奥の部屋に居ると言われて、デメミトリは部屋へと駆けこんだ。
「失礼しますっ⁉」
ノックもしないでドアを開けたデメミトリ。
部屋では丁度、ラクロワド商会の会頭であるボルガルが息子で副頭のアル―マンと話をしていた。
「何事だ⁉ 騒々しい‼」
「すいません。至急、伝えたい事がありまして報告に参りました」
「ふむ? 報告だと?」
「お前は確か、今日はデカス商会から参加脱退の違約金を貰いにいく筈ではなかったのか?」
あくどい笑みを浮かべるアル―マン。
デカス商会が傘下に入る際に交わした書類はラクロワド商会に利益しかない書類を偽造してボルガルに渡した事はデメミトリは知っていたが、今はそんな事を話す場合ではない。
デカス商会で起こった事を全て話した。
「成程な。それがその金の延べ棒か」
「見事じゃないか。売ればかなりの利益が出るな。父さん」
「うむ。早速、その者に渡りをつけて傘下に入る様に促せ。入らないと言うのであれば、言う事を聞く様にしれば良いだろう」
「……無理です」
デメミトリは青ざめた顔で首を横に振る。
「? どういう意味だ?」
「そんな事をしたらこの商会は潰れますっ」
「うん? その者はこの副都に来たばかりであろう。そんな者を恐れるのに必要など」
「その者は『義死鬼八束脛』を雇っているんですよ。もし、手なんか出したらうちはあっという間に潰されますよっ」
「……っ⁉ 本当か、それは?」
「この目で現総長ダイゴクが居るのを見ましたから」
デメミトリの言葉を聞いて、ボルガル達はどうした物かと考えたが答えは出なかった。
三日後。
デメミトリは部下を連れてデカス商会がどうなっているかどうかの偵察に向かった。あの子供が商会をどんな風に扱っているのか気になったからだ。
そして、店の近くまで行くと其処から賑やかな声が聞こえて来た。
三日前まで閑古鳥が鳴っていた店が、今は行列が出来ていた。
その行列を見て、デメミトリは部下に声を掛けた。
「会頭でも副頭でもどっちでもいい。デカス商会が息を吹き返したと報告しに行けっ」
「へ、へいっ」
部下の背を見送ると、デメミトリはデカス商会を見ながら心の中で思った。
(嫌な予感が止まらねえ。もしかして、かなりやばいんじゃあねえのか?)
デメミトリは内心、そんな思いでいっぱいであった。




