第28話 ちょっと予定が狂ったけど
う~ん。どうしたものか。
グレミーさんは今は金が無いから後日用意すると言い。
ラクロワド商会の使いはそんな言い訳など信じられるか今すぐ用意しろと言う。
「面倒な時に来てしまいましたね」
「どうしますか。若?」
「そうだね」
少し考える。こちらとしても今の段階でデカス商会が無くなるのは困る。
何せ、これからラクロワド商会に仕返しをするのに必要だからな。
かと言って、まだ商売の話も取引もしない僕が金を用立てては流石にお人好し過ぎると言うか何様だ?とも言われても仕方がないと言われてもおかしくない。
しかし、このままにしてはこの商会が畳む事になりそうだしな。さて、どうしたものか。
そう悩んでいると、ラクロワド商会の人が話が進まない事に苛立ったようで強硬手段に出た。
「いいから黙って金庫にある金を持ってこいっ」
と怒鳴ってグレミーさんを突き飛ばした。
突き飛ばされたグレミーさんは僕達の所まで飛ばされた。
「おっと」
突き飛ばされたグレミーさんに当たりダイゴクが持っていた風呂敷を落した。
風呂敷が床に落ちた事でガシャンという音が響いた。
「「あっ」」
「何じゃ?」
「おい。その包まれている物は何だ?」
ラクロワド商会の人が音がしたので気になって声を掛けて来た。
僕はそれに答えないで風呂敷の結びを解いて中身に傷が無いか確認した。
風呂敷の結びを解くと出て来たのは金の延べ棒を数十本。
他には箱の中に入った。ダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、エメラルドを付けられた指環。
そして一番の目玉は五百円玉ぐらいの大きさのダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、エメラルドだ。
「「…………っ⁉」」
「……うん。どれも傷は無いね」
「こ、このような物を運んでいたのですか?」
「若、これは心臓にヤバすぎますよっ」
「そう?」
だって、これらは全部、クリストフに頼んで作った物だからな。
金の延べ棒の普通にあるのより白いのはプラチナを溶かしてこの形にしただけだし。
指輪もある程度の形にしたら槌で叩いて成形して指環を付けただけだ。
宝石は作り方を前世で知っていたからクリストフに教えただけだからな。
正直に言って全部人工物だから、天然物に比べたらそんなに驚くものではないと思うのだけど?
「た、たいへん失礼いたしましたっ」
ラクロワド商会の人が頭を下げて謝りだした。その人の周りに居る人達も同じように謝る。
「いや、別に気にしなくても」
と言いつつも閃いた。
「では、ちょっとこちらの要望を聞いてもらっても良いかな」
「な、何でしょうか?」
僕が持っている物を見てラクロワド商会の人は丁寧な口調になった。
「この商会と取引をしたいのだけど良いかな?」
「そ、それについてはわたし共が口出す事ではないですので構いませんが、グレミーには傘下脱退の違約金だけは払っていただきます」
「それで、これなんだけど」
僕は金の延べ棒を見せる。
「何本渡せば、その違約金を払えますか?」
笑顔で僕が訊ねると、ラクロワド商会の人は周りの者達と少し話をすると。
恐る恐る指を三本立てた。ふ~ん。それぐらいか。
「っ⁉ ち、違いました。こ、こっちです」
慌てて指を二本立てた。何か、僕の後ろを見て顔を強張らせているけどどうかしたのかな?
一応、振り向いたけどダイゴク達が笑顔を浮かべているだけであった。
僕は金の延べ棒を二本ほど渡した。するとラクロワド商会の人達は「で、では、これで失礼いたしましたっ」と言って店から逃げ出す様に出て行った。
さて、これで交渉が出来るな。




