第27話 交渉が出来ない
数日後。
僕は店の事をリッシュモンドとソフィーに任せてとある店へと向かう。
護衛にダイゴクとクレハを連れて行く。
今回は頭が脳筋、もとい地頭が良くないと話にならないので、この二人になった。
一部が文句を言ったけど無視した。
帰って来たら何かしら言われると思うので、何か土産を買おうか。
「若様。ところで、何処に行かれるのですか?」
「ああ、デカス商会にね」
「確か其処はあっしらの店の商品を真似たけど品質に問題があって、今じゃあ閑古鳥が鳴いている店でしたよね? そんな所に何をしに?」
「行ったら分かるよ。まぁ、その荷物が活躍すると言えば良いかな」
ダイゴクに持たせている風呂敷に包んだ荷物を見る。
それを見ても二人は首を傾げる。
まぁ、その荷物の中身はクリストフに依頼して昨日、ようやく出来た物で作った物だからな、分からないのも仕方がない。
少し歩くと、僕達は綺麗な外装の店の前に着いた。
この時間なら商品の売り買いで行商人達が店に出たり入ったりするものだが、その店には誰も入ろうともしない。
店の中に入ると客が1人も居なかった。
正に閑古鳥が鳴くという状態であった。こういう風にするように仕向けたのは僕だけど、何か罪悪感を感じるな。
と思っていると、店員が僕達の所まで来た。
「いらっしゃいませ」
「会頭は居ますか? 商談で来たのですが」
バシドの情報だとこの店の店長は六十代ぐらいの人間の男性と聞いている。
目の前に居るのは三十代くらいで人間っぽい女性であった。
何故っぽいのかと言うと、耳の所が人間に比べるとやや細長い。なのでっぽいと表現した。
ハーフ・エルフかな? う~ん。分からないな。
「会頭ですか。少々お待ちを」
その女性は一礼して離れて行った。少しするとその女性は七十代の男性を連れてやって来た。
皺だらけの顔だけど細い目には知性の光を宿していた。
身体は年相応に腰が曲がっていたが、杖持ってあるけるぐらいに健康ではあるようだ。
「お待たせしました。わたしはデカス商会の会頭をしております。グレミ―・デカスと申します」
「初めまして『翔鵬商会』の会頭をしています。リウイと申します」
「お噂はかねがね、本日は何の用で来たのでしょうか?」
「ちょっとした商談に来ました」
僕がそう言うと、グレミーさんは細い目が僅かに開いた。
「どうぞ。奥へ。詳しい話を聞きましょう」
グレミーさんが手で示したので、僕達は奥へと行こうとしたら。
店の扉がバンっと音を立てて開いた。
誰か来たのかと思い首を向けると、其処に居たのはガラが悪そうな人達であった。
「おい。爺さん。今日こそは違約金を耳揃えて返してもらうぞっ」
そう言われたグレミーさんは前に出た。
「その話は前々から言っているだろじゃろう。分割払いで支払うと。今月の末に払うと」
「その話なんだがな、会頭が言うには『そんな話など知らん。今すぐに違約金を支払え』との事だ」
「馬鹿なっ。そちらの商会の副頭のアル―マンにそう言って書類を書いて渡したはずだ⁉」
「そんな書類など知らんって話だ。という訳で、今すぐに違約金を払ってもらおうか。なければ」
話しをしていた男性は店員の女性を見る。
「あいつを奴隷にしてその金で違約金の補填をしてもいいんだぜ」
ニヤニヤと笑いながら言う男性。
「ぬ、ぬうう……」
言葉を詰まらせるグレミーさん。
何か凄い所に来たようだな。




