第23話 いちよう用心しておくか
それから数日後。
タイヤと似たような品でホイルと言う物が売り出されてそれなりの時間が出来た。
客から聞いたのか、それとも店の外に出て知ったのかは分からないが、ティナや他の人達が僕にホイルの事で訊いてきた。
それについては、何もしないでいいと言うと皆不満そうであった。
ティナ何か『その店を潰してもいい?』と訊いてきたのが、何とか宥めた。
血の気が多いのは問題だなと思う。逆に椎名さんは冷静であった。
まぁ、元居た世界じゃあこういうコピー商品なんて何処にでもあったから気にする事はないと思っているのだろう。
正直、笑顔で『その店を燃やしても良いかな?』と言うのではと思っていた。
何とか皆を宥めていたある日。僕が店の休憩室で休んでいる所にリアフォさんが話を聞いたのかホイルを持って来てくれた。
「これが最近話題のホイルです」
「へぇ、これが」
僕はそのホイルを触りながら、どんな物か確かめた。
弾性はあるけどベトベトするな。それにこれは空気を入れて膨らませたな。
製品としては悪くはないけど、このホイルだと長距離の移動は出来ないな。というか、移動している間にパンクするな。強度が弱すぎる。
「どう思いますか?」
「ふ~ん。これでは売り物にはならないね」
断言出来た。
「分かりました。この商品を増産したいので資金提供してくれと、ある商会が打診してきましたが丁重に断りますね」
この商品で資金提供を申し出るとか凄い剛胆だな。
前世に居た世界だと直ぐに回収する物だぞ。これは。
「ちなみに、そのある商会とは?」
「デカス商会ですが、」
「ですが?」
まだ何かあるのか?
「この商会は最近とある商会の傘下に入りまして、今回の一件もその商会が絡んでいると思います」
「その商会の名前は?」
「ラクロワド商会です」
うん? そんな名前の商会を最近、何処かで聞いたような。何処だっけ?
「ご用心を。この商会はそこそこ古い商会でこの副都でもそれなりの影響力を持っています」
「分かりました。ご忠告ありがとうございます」
「では、これで」
リアフォさんは一礼して、部屋から出て行った。
しかし、これはもっと品質を強化しないと売り物にならないだろうに。ゴムを使った商品が無いからこんな物まで出回っていると考えるべきかな?
こんな劣化コピー商品を出したら、余計に僕の店のタイヤが売れるとは考えないのだろうか?
見様見真似で出来た物で自分の首を絞めるとは思わないのだろうな。こういう物を作る人は。
そして、こういう物を作る人が作って売れないとする事は二つ。
この商品を売っている店の評判を落とす。もしくは製造している者から技術を奪うのどちらかだ。
そう思うと、僕は手を叩いた。
すると、音もなく僕の前にバシドが現れた。
「お呼びで?」
冗談で教えたのに様になっているな。
まぁ、今はそんな事はどうでもいいか。
「クリストフの親子に密かに護衛をしてくれるかな」
「畏まりました」
「後、ダイゴクも呼んできて」
「はっ」
そう答えると、バシドは影の様に姿を消した。
何か、益々忍者っぽいな。
その内、魔眼とか分身の術とか出来る様になったりして。何てな。




