第41話 それはないだろう。女神様
『ま、まいった』
もう何十発撃ったか分からないくらいに撃っていたら、突然ネヴァンが降参の声をあげた。
と、言う事は。
「これで僕達は魔法を使えるということで、いいのかな?」
『うむ、そのとおりだ』
元々黒いので分からないが、何となくだがここに来た時に比べて、少し黒い気がする。
それに焦げて、羽のいたる所がチリチリになっている。
「やっっったあああああっ‼」
マイちゃんが飛び跳ねて喜んでいる。
僕は気になる事があるので、訊いてみた。
「ネヴァン、聞いてもいいかな?」
『我が答えれる事ならば、何でも答えよう』
「じゃあ、僕達はどうやったら魔法を使えるのかな?」
皆みたいに契約をするのか、それとも、この場にあの女神達が現れて契約を交わすのかな。
そこの所は聞いてなかったので、ここで聞く。
『それについては女神様方が、汝らの元に近い内に来ると思われる』
「それはいつ?」
『・・・・・・・・分からん』
溜めて言う事じゃないだろう‼
とにかく理由を聞こう。
「何で何時来るか分からないのかな?」
『神というのは時間にルーズな所があるゆえ、なので、いつ来るかなど予測が出来ない』
要するにマイペースだから何時来るか分からないという事か。
流石、神様。凡人には出来ない事を平然とするとは。
「じゃあ、女神様方が来るまで魔法は使えないと言う事ですか」
『そうなる』
そんな、あれほど頑張ったのにそれはないだろう。
まぁ、魔弾銃|(仮)とその弾丸を作ったのは侯爵だけどさ。
僕達の話を聞いて、マイちゃんは空を見上げながら咆える。
「ちょっと、それはないんじゃない。こら、神様、聞いているんでしょう。今すぐここに来て契約を交わしなさいよ。もしくは、今すぐあたしに殴られなさいよっ!」
マイちゃんが凄い事を言いだした。
僕は慌てて宥める。
「お、おちついて、マイちゃん。この世界で神様に噛みつくとか命知らずな事は止めてよ」
この世界の神様だったら天罰とか下せそうで怖い。
マイちゃんを落ち着かせようとしたが。
「ガルルルルルルルルルルッッッッ‼」
あかん、これはかなりキレてる。
一度こうなったら、なかなか怒りを収まらないんだよな。
とはいえ、僕も伊達に幼馴染をしている訳では無い。
ちゃんと怒りを収める方法は幾つもある。
「マイちゃん、今度好きな料理をこっちの食材で作るから、怒りを納めてよ」
吊り上がった目で僕を見る。
よし、反応あり。ここで畳み掛けるぞ。
「プリンが良い? それともケーキかな? それともローストビーフ?」
とりあえず、マイちゃんが好きなモノをあげる。
マイちゃんは少し考えている。
考えているという事は、気持ちが落ち着いてきているという事だ。
「・・・・・・・・今言ったの全部」
「全部か、う~ん、出来るところあるかな」
王宮の厨房を借りるのは少し心苦しい、とはいえ、それなりに設備が整った所じゃないといけない。
そんな所あるかな。
と、考えていたら、マイちゃんの怒りメーターが上がりだしてきた。
(あっ、そうだ。あそこなら、大丈夫かな)
知り合ってそれほど経ってないけど、何となくだけど頼んだら無下にしないと思う。
「わ、分ったよ。今度ね」
「明日」
「はい?」
「明日が良い」
「あした、明日ちょっと・・・・・無理かな」
「じゃあ、何時なら大丈夫?」
「そうだな・・・・・・・・五日後だったら」
「よし、じゃあそれでいい」
さっきとはうってかわって、笑顔を浮かべる。
ふぅ、どうにか怒りを収めたぞ。
そう思っていたら、肩がトントンと叩かれる。
振り返ると、そこにはユエ達が居た。
「ノブ、それはわたし達も一緒だろうな?」
「え、えっと・・・・・・」
「まさか、イノッチはサナダッチは連れていけて、あたしたちは駄目とか言わないよね?」
「それは・・・・・・」
「それは?」
「・・・・・・・・いえ、皆さんも一緒にどうぞ」
三人共ハイタッチしながら喜ぶ。
『もう話はよいな。我は行くぞ』
あっ、すっかり忘れていた。
「すいません。助かりました」
『よい。では、さらばだ』
ネヴァンは翼をはためかせて、飛び立った。
僕らはネヴァンを見送ると、侯爵に報告する為、訓練場を後にした。




