第21話 夜の部が始まります
開店してから数時間が経った。
もう昼は過ぎて夕方から夜になるという時間帯だ。
客も居なくなった。
「リウイ様。一階と二階に客は居ないとの事です」
「よし。じゃあ、これより店は夜の営業に移行。直ちに準備を」
「分かりました」
僕がそう指示すると、ソフィーが直ぐに行動を開始した。
その準備が終るまで、僕は三階の休憩室で休む事にした。部屋に入ると、既に休憩していのだろうティナ達が居た。
「あっ。リウイ。お疲れ~」
「ご苦労様。リウイ」
「お疲れでしたね。リウイ様」
「疲れていませんか。リウイ様」
ティナ、カーミラ、アマルティア、ランシュエの四人は僕を見るなり聞いてきた。
「大丈夫だから」
「そう。ねぇ、夜の部が始まるまでまだ時間があるんでしょう。暇つぶしに何かしない?」
「別に良いけど。何をするの?」
僕がそう訊ねると、ティナが何かを出した。
「何か公国ではトランプっていうカードゲームがあるんだってそれをしない?」
「とらんぷ? どんなゲームがあるの?」
「ええっと、大富豪、神経衰弱、ババ抜き、七並べとか色々あるそうよ」
トランプで出来る遊びを書いた紙なのだろう。その紙を見ながらティナが言う。
「じゃあ、ババ抜きをしよう」
「うん。って、リウイは知っているの?」
「まぁね。それぐらいは」
前世で数えきれない程したからね。
特にバラエティー番組の影響でかババ抜きを良くユエとマイちゃんと三人でした。
一番最初に上がった人が最後に負けた人に一つ言う事を聞くというルールで。
ちなみに最後に負けた人になったのは大抵マイちゃんだった。
僕達はババ抜きをした。
三時間後。
「う~ん。これっ」
「残念。ババ」
「またっ、ババ‼」
「わたしの番ですね」
「ちょっと待って。・・・・・・どうぞ」
「……これ」
「ああっ、又負けたっ」
「弱いわね。ティナ」
「全戦全敗。これは最弱王と言っても良いわね」
「く、くぅぅ・・・・・・」
言い返せせいか顔を真っ赤にさせるティナ。
でも、本当に弱いな。まぁ、ババを持っていると顔にもろに出るからな。
そうして楽しんでいると、部屋がノックされた。
そして入って来たのはソフィーだった。
「リウイ様。夜の開店準備が整いました」
「そう。思ったよりも早かったね」
僕は椅子から立ち上がる。
「わたし達の休憩は終わり?」
「いや、皆はまだ休んでいいよ。僕はちょっとどんな風に店が回っているか見るだけだから」
僕はそう言ってソフィーと一緒に部屋を出た。
「店の前の状況は?」
「既に開店を待っている人達が列をなしています」
「そうか。準備が出来次第店の中に通して」
「分かりました」
歩きながら話をしていたからか、直ぐに二階に着いた。
二階にはバーになったスペースをせわしなく走っている店員達の姿があった。
その中にこのフロアを任せているシャルさんが僕を見るなり足を止めて、僕の元まで来た。
「リウイ様。お疲れ様です」
「お疲れ様。そっちはどうだい?」
「母も妹も準備が完了です。何時でもお客様をお通しできます」
「よし。ソフィー」
「分かりました。お通しします」
ソフィーは一礼して一階の方へ向かう。
その背を見送っていると、シャルさんが訊ねてきた。
「あの、リウイ様」
「どうかした?」
「どうやって二階まで連れて行くのですか? 一階は閉じているのでしょう?」
シャルさんが言う通り、二階へと向かう階段は店の奥の方にある。
一階が閉鎖しているのにどうやって通るのか気になっているようだ。
「ああ、大丈夫だよ。貴女の御父さんは良い発明をしてくれたよ。ネーミングセンスはイマイチだけど」
「はい?」
そう話していると、何処からかチンっという音がした。
その音がした方を見ると、扉があった。
扉が開くと其処から客が入って来た。
「ほら、お客様だよ。ご案内して」
「は、はい」
シャルさんは来た人達を案内した。
ふむ。問題なく動いているようだな。
そう思っていると、リッシュモンドが傍にやって来た。
「設置した昇降機は問題なく動いています」
「まぁ、事前に試運転はしているからね」
入り口近くに魔石を動力にした昇降機を設置した。
昇降機の事をクリストフに話したら、直ぐに作ってくれた。
「クリストフの技術力も流石ですね」
「そうだけど、ネーミングセンスがね」
最初に付けた名前が『上下に動き着いたら音がする箱』だもんな。




