第17話 これなら良い宣伝になるだろう
翌日。
僕は店の前でタイヤを嵌めた数台の馬車を見た。
幌を外したので荷車のような感じだ。
「用意出来た?」
「既に文面が書かれた紙は数百枚ほど」
「配る者達の準備も完了しております。あのリウイ様」
「なに、ソフィー?」
「この紙は店の宣伝の為に配るのは分かるのですが」
ソフィーは紙を見てそれから配る人達を見る。
「何故、紙を配る者達はあのような格好を?」
「変かな?」
「いえ、そういう訳ではないのですが。その着ている服が少々刺激が強いのでは?」
そうかな?
皆、スタイルが良くからあれぐらいは着ても良いと思うな。
「カブ―モスはどう思う」
「俺ですか? そうですな。……」
カブ―モスはチラリとチラシを配る人達を見る。
ヘソだし黒色のノースリーブの服と服と同色の膝丈しかないタイトのスカート。
見ていると鼻の下を伸ばした顔をするカブ―モス。
うんうん。男ならこういう反応だよな。
「……はっ、俺は問題ないと思いますがっ」
周りの冷たい視線を感じて気を取り戻したカブ―モスは咳払いをしながら問題ないと言う。
「だろう。じゃあ、大丈夫だ」
「いえ、そのタイヤを嵌め込んだ馬車に乗って紙を配る者達にこのような格好をさせなくても良いと思うですが」
そうかな。でも、新装開店をするんだから宣伝する時はこれぐらい派手にした方が良いと思うけどな。
「あっしも同感ですぜ。これぐらい見栄えが良い方が客も足を運ぶと思ますぜ」
「「「同感‼」」」
ダイゴク達『義死鬼八束脛』の男性陣は同意と。
それを聞いてクレハ達は呆れていたが。
「うう~ん。素晴らしい。この身体のラインが出る服を着る事で美しさが余計に際立っている。正に言葉に表せられない美‼」
アオイだけ讃えていた。
「買い物をするにしても金を出す者の殆どは男性だ。ならば、男性の目を引く事で商売は上手くいくと思うが」
リッシュモンドは客観的な意見を述べる。
死人だからか、三大欲求には無縁だからこういう冷静な意見を出せるのだろうな。
「兎も角、タイヤを嵌めた馬車に乗って紙を配るだけだから、変に近づいてくる人がいない様にするから大丈夫っ」
馬車の周りにはアオイの隊が護衛する事になっているのでどうにかなる事はない。
「紙をばら撒いて宣伝にする。それでその紙を配る人達に露出が多い服を着せて印象を持たせるのは分かりました。ですが」
ランシュエとティナが僕を見る。
「その配る人達にどうしてあたし達が入ってないの?」
あ~、それは。
何と言えば良いのか。うん。
此処はソフィーに説明させようと目を向けたが、僕の目を見ないで反らされた。
仕方が無いので、誰か代わりに説明する人を見ようと周りを見たが、誰も目を合わせてくれなかった。
これは僕が言わないと駄目か?と思っている所に。
「そりゃあ、あれだろう。二人共、そんな鶏がらみたいな身体であの服を着ても人気が出な……ぐはあああっ⁉」
カブ―モスが説明している途中で横腹にボデイーブローを叩き込まれた。
更にうつ伏せになったカブ―モスに二人は追撃していた。
僕はそれを尻目に紙を配る人達を見る。
「お願いしますって言えば良いだけだから。後は笑顔を浮かべれば問題なし」
「あの、本当にこの格好じゃないと駄目ですか?」
ジェシーは顔を赤らめながら恥ずかしそうにしていた。
うん。可愛いな。これで僕達と同い年か。将来は傾国の美姫とか言われるんじゃないのか。
「お願いします。これで店の売り上げがどうなるか変わるので」
「うう、……分かりました」
ジェシーはしぶしぶ頷いてくれた。
「良し。じゃあ、後は任せた。アルトリア」
「お任せを。主君」
馬車を曳くのはアルトリア達に任せた。馬で引かせるよりもこっちの方がインパクトがあるからな。
「では、そろそろ行くとしようか」
アルトリアがそう言うと紙を配る人達は馬車に乗り込んだ。全員乗ると、馬車はゆっくりと動き出した。この宣伝で店に人が来ます様にと僕は祈った。




