閑話 家族会議
今回は第三者視点です。
「じゃあ、僕達はこれで。答えは何時でも良いから、返事する時はここまで来て」
リウイは自分が泊っている宿屋の名前が書かれた紙を置いて、立ち上がり部屋を出る。
「途中までお見送りしますね」
シャルは立ち上がり、リウイの後を追い駆ける。
クリストフ達は見送りに行かず部屋に残った。
「どう思う?」
クリストフが最初に口を開いた。
「どう思うって言われても、ねぇ」
「うん。ちょっと困るね」
二コラとジェシーの二人は返答に困った顔をしていた。
何せ、赤の他人にいきなり「二階でちょっと商売をしてみないか?」と訊かれても答えに困るのは仕方がない事だ。
二階を昼は喫茶ルーム。夜は酒場にするので其処で働く人が欲しいと言われた。
勿論、二コラも警備として雇うとも。
「あまりに良い話過ぎて怖いんだけど」
「そうね。いい加減、残った借金を払わないと姉さんかジェシーが連れて行かれそうだしね」
「ああ、そうだな」
「利子分はさっきのリウイって子が払ったから、残りは百五十万ゴルドね
「そうだな」
三人はどうしたものかと頭を悩ませた。
其処に部屋のドアを開けて入って来る者が来た。
「ただいま~」
部屋に入って来たのは女性で二コラ達とよく似た顔立ちの女性であった。
女性にしては高い身長にモデル並みのプロポーション。
出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいた。顔立ちはシャルやジェシーにそっくりだが吊り上がった目者とは二コラにそっくりであった。
「あっ、母様。お帰り」
「今日は早かったのね」
「ええ、今通っている店、改装するとかで暫く来なくて良いと言われてね」
「そっか。じゃあ、母様の稼ぎも無くなるんだ」
「これは本格的にヤバいわ。わたしとジェシーと姉さんの仕事の稼ぎじゃあ生活するだけで精一杯だし」
「これは本当に提案を受け入れた方がいいかもな」
頭を捻る三人。
話に付いて行けないリリーは首を傾げた。
其処にシャルが戻って来た。
「姉さん。お帰り」
「お帰りなさい」
「ただいま、ニコ、ジェシー、父様、母様」
「お帰り」
「珍しいわね。シャルが何処かに出掛けていたなんて」
「うん。ちょっとね」
「姉さん。どうしよう、母様が暫く仕事が無いんだって」
「そうなの。困ったわね」
頬を手を当てて憂鬱な表情を浮かべるシャル。
その表情をしている所を見ると、困っているというよりも美しいという印象が強かった。
「これだったら、リウイって子の話を受けるしかないのかしら?」
「ねぇ、そのリウイって誰なのかしら?」
「そうだ。まだ、リリーには話をしていなかったね。実は」
クリストフが事の顛末を簡単に説明した。
「つまり、そのリウイって子が貴方の発明を気に入って出資してくれるという事?」
「そうなんだ。悪い話ではないのだが、あまりにも話が上手すぎてね」
うまい話には裏があると思うクリストフ。
「そうね。・・・・・・じゃあ、明日、わたしがそのリウイって子に会いに行ったらいいじゃない」
「えっ?」
「わたしがその子に会ってその話を受けるかどうか決めるってのはどう?」
リリーの言葉を聞いて、四人は少し考えた。
「そうだな。此処はリリーに任せよう」
「父様が言うのなら」
「わたしもそれで良いと思う」
「わたしも」
クリストフ達は異論はないようであった。
「そう。なら良いわ。もし、その店に働く事になっても絶対にわたし達の秘密はばれないように注意しなさいね」
リリーが真面目な顔でそう告げると、四人は頷いた。




