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第14話 二階のコンセプトがようやく決まった。

 数分後。


「た、大変失礼な事をして申し訳ありませんでした」

 二コラという女性は深々と頭を下げた。

「いや、こちらこそ」

 こっちも護衛役の二人が騒ぎ出したのだから同罪だ。

「ほら、向こうは謝ったのだから二人も謝る」

「すいやせんでした」

「陳謝する」

 僕が強く言うと、二人は頭を下げた。

 二人が謝ったのを見て、僕は改めて二コラを見る。

 う~ん。こうしてシャル達と見比べてもかなり違うな。

 姉のシャルと妹のジェシーは猫なのに、この二コラだけ獰猛な虎みたいな雰囲気だな。

 腰に剣を差している所を見ても荒事を担当しているからかもしれないが。

「これで会っていないのは奥さんのリリーだけか。何を生業にしているんだ?」

「シンガーです。この副都では一番の歌姫と言われています」

 歌手か。そう評されているという事はかなり上手なのだろう。

「……シャルさんとジェシーさんは何が得意なのかな?」

「わたしはその料理が得意です」

 ほう、料理か。シャルさんは料理っと。

「わたしは歌ですね」

 ジェシーさんはお母さんと同じく歌っと。

 ふむ。荒事は二コラさんが担当と。

 ……これは使えるかも。

「ちょっと二人共」

「へい?」

「何か?」

「ちょっとこっち来て」

 僕が手招きすると、クリストフの家族から少し離れ小声で話をする。

「二階の件だけどさ。喫茶ルームにしない?」

「喫茶ルームですかい?」

「そう。歌や見世物がある喫茶ルーム」

「それって酒場じゃないですか?」

「昼は喫茶。夜は酒場にするんだよ」

「それだったら、最初から酒場にした方が良いと思うんですが?」

「昼、喫茶にするのは買い物客が疲れた時に休めるスペースにしたいんだ。ついでに飲み物と軽食も出す」

「成程。だとしたら、料理人が必要ですね。うちの料理番だと夜は大丈夫ですが。昼はちょっと」

 ダイゴクが頭を掻きながらそういう所を見ると、恐らくお菓子とかは作れないという事か。

 ふっ。其処も大丈夫。

「で、その昼の喫茶はシャルさん達に任せるというのはどう思う?」

「あの娘っ子達にですか?」

 ダイゴクはチラリとクリストフ達の方を見る。

「大丈夫ですかい?」

「お金を稼げるのだから逃げたりはしないだろうし、逃げた所で何処に行くの?」

「それはそうですが」

「クリストフも資金がないと何も開発できないと分かっているだろうから逃げたりはしないよ」

「言われてみれば。それに先程、若が利子を立て替えましたからね。それで逃げるとしたら人として終っていますぜ」

「まぁ、逃げられでもしたら僕の人を見る目が無かったと笑うだけさ」

 僕が肩を竦めると、ダイゴクは笑い出した。

「あっはは、若。その言い方は姐さんそっくりですぜ」

 ええ~、母さんとそっくりか。嬉しいような嬉しくない様な複雑な気分だ。

「そういう言葉を聞くと姐さんの息子なんだなとつくづく思いますぜ」

「それはどうも。で、ダイゴクの意見は?」

「まぁ、あっしはこれは無理だろうという事以外は若の言う通りにいたしますぜ」

「反対しないと。リッシュモンドは?」

「わたしも同意見です」

 よし。知恵袋の言質はとった。

 なら、早速は話を進めるか。

 僕が振り向くと、クリストフ達はギョッとした。

「どうかした?」

「い、いえ。何でもありません」

「そう。ところで、クリストフ」

「は、はい。何でしょうか?」

「ちょっと相談があるんだけど」

「相談?」

 僕は二階の事をクリストフ達親子に話した。

 リウイとダイゴク達が話をしている頃。魔国では。

 珍しくハバキとオルクスが一緒におり茶を飲んでいる時。

「へ、へっくしゅん⁉」

 ハバキがくしゃみをした。

 それをもろに受けたオルクスは顔に唾が掛かっていた。

「な、なんじゃい。いきなりくしゃみするとは、病気か?」

 貌に掛かった唾をハンカチで拭いながら喋るオルクス。

「いや、誰かが噂をしたんだろう」

 鼻をすするハバキ。

「噂のう。そう言えばリウイは元気にしているかのう」

「この前来た向こうの大陸にいる舎弟からの手紙だと頑張っているそうだ」

「ほほう、そいうは凄いのう」

「まぁ、当然だな。何せわたしの息子だからな」

 胸を張って威張るハバキ。

「其処は儂の息子と言って欲しかったのう」

 寂しそうに呟くオルクス。

 それを聞いて、ハバキは鼻で笑った。

「威厳の無い父親の息子と言われたらリウイは悲しむだろうからな」

「むっ。流石にそれは聞き捨てならんのう。これでも儂は魔王じゃったんじゃぞっ」

「そうだったな。だが、お前はそんなに強くないだろう」

「むううう、儂は弱くなどないわ。今日は久しぶりに相手をせいっ」

「面白い。相手をしてやる」

 二人は訓練場へと向かった。

 数十分後。

 訓練所にはスタボロになったオルクスとそれを見て大笑いするハバキの姿があった。

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