第13話 話を聞いて下さい
「シャル。リウイ殿と知り合いなのか?」
「え、ええ、昨日ちょっとした事で」
「そうだね」
まさかもう一度会えるとは思わなかったな。
「父様。シャル姉さん。とりあえず家に入らない?」
ジェシーはおそるおそる僕達に家に入るように勧めた。
そう言われて周りを見ると、周辺の住民の人達が何事かと好奇に満ちた目で僕達を見ていた。
「……とりあえず、家に入ろうか」
「そうですな。少し我が家についてお話しをしたいですから」
クリストフは僕達を家に招き入れてくれた。
家に入り、中を見回すと何処かしら亀裂が入っていたり隙間風が入ったりしていた。
「こいつは典型的な文無しの家ですな」
ダイゴクが家の中を見てそう呟く。
僕から見てもそう思うけど、此処はコメントを控えさせてもらおう。
そうして案内された部屋には人が来ても良いようにか椅子が何脚かあった。
かなりボロイもとい年季が入ってはいるが補修されているので座るのは問題ないようだ。
僕が座ると、ダイゴクとリッシュモンドは当然のように僕の後ろに立った。
「お連れの方の分の椅子は有りますが?」
「あっしらは護衛なんで」
「同じく」
二人がそう言うので、クリストフは無理に進めるのは止めて椅子に座った。
「先程は娘を救って頂きありがとうございます」
クリストフは深々と頭を下げる。
「いや、スポンサーとして当然の事をしただけだから」
「それでも感謝させてください」
まぁ、そちらがそう思うのなら別に良いけど。
問題はどうして娘を連れて行かれたのか、そこら辺を話してくれると嬉しいのだが。
「話をする前に娘達を紹介しますね。二人共」
クリストフが娘達を手招きする。
「右から長女のシャル。三女のジェシーです」
「改めて初めまして。シャルと申します」
「ジェシーです」
シャルは礼儀正しく、ジェシーは可愛らしく挨拶する。
こうして並べて見ると、二人共姉妹だな顔立ちがよく似ている。
何となくだけど、二人の雰囲気が猫っぽいな。
お姉さんのシャルは上品な長毛種の猫で、ジェシーは甘え上手な虎猫みたいな感じだな。
「後、妻のリリーと次女の二コラが居ますが、丁度今用事で家に居ませんので折りを見て紹介します」
「ありがとう。それで、どうしてシャルが連れて行かれそうになったんだい?」
「実は先程の娘を引っ張って行こうとした者はこの副都ではそこそこ大きい商会でラクロワド商会という会頭の一人息子のアルーマンという者でして」
「ああ、それで分かった」
先程のクリストフとアル―マンという人の話でどうしてシャルを連れて行こうとしたのか理解した。
生活が苦しいから借金をして、返せないから娘を連れてこうとしたという感じか。
時代劇でよくこんな話は見たけど、本当にあるとはな。
「それでその借金はどれくらいあるんだい?」
「百五十万ゴルドです」
利子で五十万だからな。それぐらいはするか。
「またあの人達も来そうだからな。早い所を返した方が良いな」
「はい。それにつきましては」
「分かってる。店を開店させないと一ゴルドも入らないからね」
しかし、困ったな。まだ二階をどんな風にするか決まってないからな。
其処さえ決めれば開店できるのだが。どうしたものかな。
そう考えていると、家のドアが凄い音を立てて開いた。
誰か来たのだろうかと思っていると。家に入って来た人は足音を立てて僕達が居る部屋まで来た。
その部屋のドアを開けて入って来た。
入って来たのは女性だった。吊り上がった目に青緑色の瞳。腰まで伸ばした金髪。綺麗な顔立ち。
凸凹したプロポーション。来ているのがドレスと鎧が一緒になったドレスアーマーという物のようだ。
腰に剣を差しているので何処かの国の姫騎士と言われても納得する格好だった。
「姉さん。ジェシー、父様っ無事‼」
「「ニコっ」」
「ニコ姉さんっ」
「えっ⁉ この人が次女の二コラ?」
何かシャル達と全然違うな。この人だけ、豹とか虎みたいな雰囲気をだな。
そして、その二コラは僕を見るなりキッと睨む。
「貴方が借金取りねっ。わたしが来たからには皆には手を出させないわよっ」
「はっ? いやちが」
否定しようとしたら二コラは腰の剣を抜いて切っ先を僕に突き付ける。
「黙りなさいっ。今日も大人しく帰ってもらうわよっ」
「ちょっ、ちょっと待って話を聞いて」
「このアマ。うちの若に剣を向けるとはいい度胸だなっ」
「久しぶりに暴れるのも一興か」
ぎゃああっ、こっちの二人が戦闘態勢に入っちゃった‼
普段、冷静なリッシュモンドがこんなに切れるとはっ。
「お、落ち着いてニコ」
「止めないで姉さん⁉」
「二人共。落ち着いて」
「若に剣を向けて許せというのは無理じゃないですかいっ。そうだろう。リッシュモンドさんよ」
「同感だ」
「ちょっと落ちついてくれっ」
僕は二人を。シャルは二コラを必死に宥めた。




