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第12話 凄い偶然

 翌日。


 開店する店舗の中に集まり、僕達は話し合いが行われていた。

「やはり、何かを売るにしても一階と被らない物を売る方が良いでしょうね」

「と言っても、その被らない商品という物が見つからないんじゃあ駄目だろう」

「もういっそ店員の休憩室にするか?」

「三階にすると決まっているのだから二つもいらないだろう」

 話し合いが始まってそれなりの時間が掛かるけど、まだ何も決まらない。

 今日も決まらないかな。

 そう思っていると、店のドアが突然開いた。 

 誰が入って来たのだろうと思いながら目を向けると、其処には見慣れない女性が居た。

 褐色で腰まで伸ばしたカチューシャ編みの髪。平均よりもやや低い身長。

 純真で無区で愛らしさを感じさせる顔立ちと目に青緑色の瞳。

 顔立ちにとは裏腹に肉付きが良い肢体。

 その女性はクリストフを見るなり側に行く。

「お父さんっ」

「ジェシー? どうしたんだ?」

 娘さん? そう言えばこの前、妻と娘達がどうとか言っていたな。

「家にラクロワド商会の人達が来たのっ」

「何だって⁉」

 驚きの声をあげるクリストフ。

 その青ざめた顔を見ると、これは会議どころでは無いな。

「クリストフさん。何があったのか知りませんが、家に戻っていいよ」

「あ、ああ、しかし」

「そんな状態じゃあ、話し合いにもならないでしょう。早く家に戻った方が良い」

「そうだな。家に戻って状況の確認を」

 皆がそう言うと、クリストフは少し考えてから「申し訳ない」と一言言って、娘さんを連れて家に戻って行った。

 送り出したのは良いが、少し気になるな。

 そう考えていると。

「若。行くのならお供いたしますよ」

「わたしも供を」

 ダイゴクとリッシュモンドが口を挟んできた。

「いや、別にそういう訳じゃあ」

「顔に気になると書いてありまぜ」

 ケラケラと笑うダイゴク。

 その笑い声に釣られて、皆も笑い出す。

「んん。じゃあ、少し気になるし行ってみるか」

 何か此処にいたら揶揄われそうだから行く事にした。決して行きたい訳ではないのだけどね。

「お早い御帰りを」

「寄り道しないで変な人についていっては駄目ですよ」

 クレハは普通にソフィーは子供扱いされながら送り出してくれた。


 店を出ると、前からクリストフが棲んでいる家の場所を聞いていたので迷う事なく進めた。

 そして、その家の近くに行くと。

「いやっ、離してっ」

 女性の声が聞こえて来た。

 どう聞いても嫌がっているとしか思えない声だった。

「急ごう」

 僕がそう言うと二人は頷いた。

 足を速めると、家の前で女性が男性に強引に腕を引かれていた。

「ほら、来いっ」

「へへへ、恨むのならうちの商会に借金をした親父を恨むんだな」

「感謝しろよ。僕がお前を僕の物にしてやる代わりに借金は棒引きにしてやるんだから」

 男性達は下卑た笑みを浮かべながら女性を引っ張る。

「待ってくれ。借金はもう少しで返せる宛ては出来たから、後少し待ってくれ」

 クリストフは男性の足にしがみつきながら懇願した。

「じゃあ、今すぐに利子分を返したらその話を信じてやる」

 女性を引っ張っている男性は足元に居るクリストフに冷酷に告げる。

「そ、それは」

「今までの利子分だから五十万ゴルド。今すぐ出せ」

「…………」

「出せないだろう? じゃあ、その手を離せ」

 男性はクリストフの手を振り払った。

「お、御願いだ、娘は、娘だけは‼」

「五月蠅い。借金を返せば帰してやるっ」

「じゃあ、僕が利子分を立て替えても返してくれるんですね?」

 僕が話しに割り込んだ事で、クリストフ達はほぼ同時に僕を見る。

「誰だ。お前?」

「僕はクリストフの……スポンサーかな?」

「何で疑問形なんだよ?」

「いや、まだ出資してないので」

「……まぁ良い。で、そのスポンサー様は本当に今すぐに利子分を出せるのか?」

 男性がそう言うので、僕は懐に入れている財布を出した。

 其処から大金貨を五枚出して、男性に渡す。

「これで問題はないですよね」

「っち、まぁ利子分はな」

 男性は女性をクリストフに返した。

「だが、まだ利子しか払っていない。其処はちゃんと覚えておけよっ」

 男性はそう言って取り巻きを連れて離れて行った。

「父さんっ」

「おお、シャル。良かった。本当によかった」

 クリストフとシャルという女性は抱き合いながら互いの無事を喜んだ。

 少し離れた所には、先程姿を見せたジェシーという女性もおり、シャルと言う女性の無事を涙を流しながら喜んでいた。

 やがて、互いの無事を確認終えたのか、クリストフとシャルと言う女性は離れて僕を見る。

「申し訳ない。まだ何もしてないのに借金の一部を払ってもらって」

「まぁ、出資する以上、これぐらいは・・・・・・あっ」

「あら」

 僕とシャルという女性はお互いの顔を見て驚いた。シャルという女性は昨日、顔を見た女性だったからだ。

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