第10話 これで商売になる物が出来た
さて、次はそうだな。この箱が気になっていたから次はこれを聞くか。
「この箱は何ですか?」
「それはここ最近で一番の傑作名付けて『ほぼ動力交換しないで何でも冷凍冷蔵できる箱』だ」
ネーミングセンスに問題あるな。この人。
名前を聞いた限りだと冷蔵庫と冷凍庫が一緒になった物という事だろう。
僕が聞く前にクリストフがその箱の説明をしだした。
「一般に広まっている冷蔵出来る箱や冷蔵室といった物は氷属性の魔石で温度を下げる事で食品を保存する。だが、この『動力交換しないで何でも冷凍冷蔵できる箱』は違う。これは中の魔石を半永久的に活動させる事が出来るのだ」
「ほぅ、どうやって?」
「箱の外側に付いているこの部分がこの世界に漂っている魔素を吸収しそれを魔力に変換し魔石に流し続ける事で魔石が壊れない限りほぼこの箱は起動できるのだっ」
ようはソーラーパネルで充電できると考えれば良いんだな。成程。これは良い。
「……まぁ、資金不足でまだ魔素を吸収しそれを魔力に変換できる装置は不十分と言えるが、魔石で冷凍も冷蔵できる所は完成しているので、魔石を取り換える冷蔵と冷凍できる箱として機能は出来る」
中途半端に出来ていると。それにしても。
「二つで一つの機能よりも冷蔵と冷凍を分けた方が良いと思うんだけどな」
「……盲点だった‼」
ああ、今ので分かった。この人思いついたまま物を開発する人だ。
という事は、前世の知識にあり、転移した当時の技術力では開発できなかった物を開発できるかもしれないな。あれとかこれとか。
問題はこの人の性格だな。僕がスポンサーになったとしてそれらを売る際に口を出すかも知れない。
でも、何となくこの人はそういう性格ではないと思うんだよな。
「ええっと、クリストフさん。ご相談があるんですが?」
「何だ?」
「貴方の開発した物は素晴らしいと言えます。そこでわたし達が貴方を後援したいと思います」
僕がそう言うと、皆は何とも言えない顔をしだした。
この人、それだけの価値があるの?と書かれいるのが分かる。
「リウイ様。この者が作る物はそれだけの価値はあるのですか?」
「あるよ」
リッシュモンドの問いかけに僕は断言した。リッシュモンドの耳元に顔を寄せる。
「この人の知識、というよりも技術力は金を出す価値はあると思うんだ。正直に言って、僕達の中で頭が良い者は、脳筋、じゃなかった腕に自信がある者が多い反面、商品になる物を作りだすという技術を持っている者はそう多くないだろう」
「ふむ。ですな。今の所、狩り以外で手に入る物と言うとアラクネ達の生糸を作る事と、ビクインは蜂蜜を作るぐらいですからな」
「だから、此処は僕の知識の中にあるものをこの人の技術で再現させるというのが良いと思うんだ」
「成程」
僕の説明にリッシュモンドは納得してくれた。
「ほ、本当に良いのか? 正直に言ってこの箱を完成させるにしてもどれだけの資金が掛かるか分からないのだぞ?」
「そこら辺はゴーミマを加工した物で補填すればいい思いますので」
タイヤ。丸めてボールにする。空気を入れれば浮き輪にもなるだろう。後は一輪車とパッチンぐらいかな。これだけでも十分に売れるだろう。
「という訳でこれからも開発した物を僕の所に卸して下さいね」
「……ふ、ふぐ、これで妻と娘達に良い報告が出来る」
涙流しながら語るクリストフを見て思った。妻帯していたんだと。




