閑話 労多くて益少なし
今回はアマルティア視点です。
リウイ様と一緒の宿に泊まる事が出来て神に感謝したい気分ね。
思えば、初めて会った時からずっっっっと行動を共にしているけど、いつもいつもいつもいつも誰かしら居る。この場合のいるはアルティナさん達の事を言う。
リウイ様は王子様だったという事で護衛がいるけど、まぁ護衛なので異性であるという事を除けば居てもらわないと傍に行く事が出来ない。
もし、リウイ様一人でいればアルティナさん達は「独りでいたら危ないでしょうっ」とか何とか言って一緒に居ようとする。
わたしも、もし一人でいればそう言うので非難はしない。
だが、今日はわたし一人しか居ない。
これは好機と言えるわね。
この機会にリウイ様に迫れば、ふふふ。
お爺様。御父様。お母様。アルゲディ兄様。ナシラ。今宵、わたしは大人の階段を上ります。
「どうかしたの? アマルティア?」
おっと。頭の中で妄想もとい色々と考えていた所為かリウイ様が不思議そうな顔をしてわたし見ていた。
ここは平常心。平常心。
「いえ、故郷では見た事が無い建物が多いので目を奪われていました」
「そうだね。僕達のいた故郷には建物形式だよね」
「こうして大陸に来ると良く分かります。つくづく自分が鄙びた所に住んでいたか」
「そう卑下する事はないと思うけど」
「ほほ、そうですね。あちらにはあちらのこちらにはこちらの建物があるという事ですからね」
「そうだね」
リウイ様はそこまで話したら傍に居るアルトリアに話しかける。
ふぅ、これで妄想していたという事は隠せたわ。
後は部屋に着いて荷解きしたら、リウイ様の部屋に行って、むふふ。
その夜。
色々と準備をしたわたしはリウイ様の部屋に行ったのだが。
ドーン! とそんな音がしそうな位に腰に短弓を指して右手には短い槍。腰には剣を差して完全武装しているアルトリアが居た。
リウイ様の護衛は一人という事でやる気に満ちているのが分かる。
分かるのだけど、これではリウイ様の部屋に行けない!
むう、こんな所で障害があるとは。
でも大丈夫。
こんな事もあろうかと、前もってこの宿の周りを見ていた。
外からどう行けばリウイ様の部屋に行けるか既にルートを想定済み。
表から行けないのであれば、裏から行くのが常道。
わたしはその場で踵返し、自分の部屋に戻り窓から外に出た。
テラスとかベランダというものがないので、手を伸ばして屋根を掴む。其処から腕の力だけで屋根の上へと上がる。そのまま屋根の上を歩き、リウイ様の部屋まで来る。
そっと窓から部屋の中の見ると暗くてよく見えなかったが、誰も居ない事が分かった。
それでもわたしは腰差している小刀を出して窓で円を描いた。
すると、円を描いた所がスッと切れて穴になった。
ふふふ、こんな事もあろうと切れ味のいい小刀を用意して良かったわ。
穴が開いた所から手を伸ばして窓を開けて、其処から部屋に入る。
足音を立てないでベッドまで来ると、わたしはベッドに横になり自分の匂いをマーキングする様に擦りつける。
ふふふ、こうしたらリウイ様はわたしの匂いに包まれて眠る事でしょうね。
そう思うと、わたしは嬉しい気持ちがいっぱいでベッドに身体を擦りつけた。
結局、そのまま眠ってしまったけど。
アマルティアがリウイのベッドでマークングしている頃。
「アングルボザ。そろそろお開きにしない?」
「いや、まだ飲み足りん」
リウイはアングルボザの部屋で酒を飲んでいた。
今回の宿のメンバーで酒を飲めるのは僕だけだから一緒に飲んでいる。
アルトリアは護衛という事で酒を飲まない。アマルティアは酒が凄い弱い。
なので、リウイが相手をする事になった。
「ほれ、飲め飲め。酒はたんまりとあるぞ」
「僕もそんなに強くはないのだけど」
「気にするな! もし、眠たくなったら此処で寝れば良いだけだっ」
「そこまで飲むつもりは」
「良いから飲めっ」
アングルボザはリウイに酒を勧めて来たので飲む事になった。




