閑話 姉への報告
今回はヘルミーネ視点です。
「……成程。そういう訳ですか」
ロゼ姉さんの部屋を出たわたしはフェルとミリアリアと別れて、イザドラ姉さんの部屋に向かった。
幸い宰相の仕事は終わっていたようでイザドラ姉さんは快く部屋に通してくれた。
部屋に来たのは今回の手紙の内容を一応報告する為とそう遠くない内にイザドラ姉さんと一緒にリウイの下に行くので話は通した方が良いだろう思い来た。
流石に手紙の内容を全部言えば、イザドラ姉さんが大暴れるする姿が目に浮かぶので、最後の所は言わないで話をした。
「向こうの大陸に行くのは構いませんが。まさかわたし達だけで行く訳ではないでしょうね?」
「それについてはロゼ姉さんは何も言っていなかったけど、多分、少しは護衛を連れて行くのだと思う」
「ふむ。そこの所は後日、姉さんが話をすると思いますから其処で決めるとしましょう」
「そうだね」
わたしは頷くと茶を飲んで喉を潤す。
「それにしてもリウイの周りには色々な事が起こりますね。こっちにいた時もそうでしたが」
「言えてる」
本人は自覚してないだろうけど、何かしらのトラブルの中心には何時もいる。
向こうの大陸に行ってもそれは変わらないのは何と言えば良いのか分からない。
「まぁ、其処がリウイらしいとリウイらしいんですけどね。特に因縁をつけてきた商会を潰して合法的に財産を奪うとは、普通なら誰もしない事をしますね。わたしだったらその商会を潰して終わりですけどね」
イザドラ姉さんならそうだろうなと思いつつ茶を飲む。
うん。流石は姉さんだ。美味しい茶を出すな。そう言えば、リウイも茶が好きだったな。
「……ところで、ヘルミーネ」
「うん?」
「リウイに古龍の娘が嫁に来たという話はしないのですか?」
「ぶふっ⁉」
思わず吹き出しそうになった。
手で口を抑えながら咳きこんだ。
何で、その事を知っているんだ⁉ 話してないのにっ。
もしや、わたしがこの部屋に来る前にロゼ姉さんが先に来てイザドラ姉さんに手紙の内容を話したのか⁉
「な、ななんのこと?」
思わずどもりながら知らないフリをする。
「声が震えてるわよ。それと目が泳ぎ過ぎよ」
冷静に言うイザドラ姉さん。
「え、えっと……どうしてそれを?」
もう隠す事は出来ないと思いわたしは訊ねた。
すると、イザドラ姉さんは懐から手紙を出した。
「姉さんがソフィーディアにリウイの事を報告する様に命じたように、わたしも信頼できる者にリウイの事を報告する様にしたのですよ」
そんな事をしたの⁉
正直に言って驚いた。イザドラ姉さんは人を見る目を持っている。
裏を返せば簡単に人を信用しない人だ。自分の部下ならまだしも、どう考えてもリウイの部下を信頼するなんてあり得ないと思っていた。
「ふふふ、こういう事に備えてちゃんとそういう人材を見つけていましたからね」
「うう、じゃあ」
「勿論。くふふふ、面白い事をする子ですね」
笑顔だけど怒っているだって。
ベシ! ベシ! ベシ!
尻尾が椅子を叩いているのだから。これはそうとう怒っていると分かる。
「ふふふ、これは近い内にその押しかけ女房というふざけた事をする泥棒猫を見に行きませんとね。ふふふふふふ」
リウイ。ごめん。わたしじゃあ、姉さんは止められない。頑張って。
それにしても、リウイの部下で姉さんが信頼した人物というのは誰なのだろうか?
イザドラとヘルミーネが話している頃。
「……うえ⁈」
リウイの背筋に寒気が走った。
「どうしたのよ? 変な声を出して?」
偶々、傍に居たアルティナが不思議な顔をして訊ねてきた。
「何かよくわからないけど、悪寒して……」
「おかん?」
意味が分からず首を傾げるアルティナ。
リウイもどうして背筋に寒気が走ったのか分からず首を傾げた。




