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第92話 頭が痛い

 少しして。

「落ち着いた?」

「うん。……」

 転げまわっていた椎名さんだったが、僕が見ている事に気付くと転がるのを止めて今度は蹲りだした。

 恥ずかしい所を見られたから蹲っているのだろう。

 それなりの時間を置くと、立ち上がりニッコリと笑顔を浮かべた。

 そんな姿を見て立ち直りが早いなと思った。

「ところで、いの、じゃなかったリウイ君」

「なに?」

「リウイ君はこれから何処に行くの?」

「副都って所に行くんだよ」

「ふ~ん。そうなんだ」

 それを聞いてニンマリと笑う椎名さん。

 何か嫌な予感がするな。

「ねぇ、リウイ君」

「何かな?」

「わたしも付いて行っても良いかな?」

 指で自分を指しながら訊ねてくる椎名さん。

「えっ、それは、ちょっと……」

 正直に言って面倒ごとが起こるのが火を見るよりも明らか何だよな。

 だって、リリムが居るから。

 この二人相性が最悪と言っていい。水と油ではなく混ぜるな危険だ。

 会った途端殺し合いに発展しそうだ。

 それはかなり不味い。リリムは信頼できる部下だし、椎名さんは友人だ。そんな二人が殺し合う所を見るのは嫌だ。

 それに本人はどう思っているか知らないが『八獣』の一角に入っているからな。僕に付いて行くと事はこの山を離れるという事になる。

 そうしたら『八獣』の一角が居なくなった事に気付かれるだろう。そんな事になったら、国を巻き込んだ大事になりそうだ。

 此処は断った方が良いだろうな。

「だめ、かな?」

 指で自分を指しながら首を傾げる椎名さん。

 可愛いと思うが、此処は心を鬼にして。

「……その、椎名さんは『八獣』の一角なんだから、此処から離れると面倒な事になると思うんだ。うん」

「…………つまり、付いて行っちゃあ駄目なの?」

「駄目と言うよりも。椎名さんがこの山に居るから公国はこれだけ大きな国になったんだから、いきなり居なくなったら、この国の人達も混乱するよっ」

「……分かったわ」

 分かってくれたか。助かった。

「つまり、この山に強い魔獣が居て欲しいのね」

「えっ?」

「じゃあ、簡単だよ。ちょっと待っててね」

 そう言うなり、椎名さんは少し離れると自分の影に魔力を流し込んだ。

 すると、魔力を流し込まれた影が徐々に形を変えていった

 その姿は椎名さんが龍になった時と同じであった。

 やがて、影は椎名さんから離れると龍になった。

「これはっ⁉」

「わたしが開発した魔法だよ。名付けて『(ドッペル)分身(ゲンガー)』だよ」

 これって、所謂分身みたいなものだよな。

「わたしよりも幾分か力は劣るけど、そう簡単にやられないでしょう」

 分身だからと言って同じ実力ではないのか。これは興味深いな。

「じゃあ、この山は任せたわよ」

 椎名さんが生みみだした『影分身』に命ずると、その『影分身』は頷いた。

 それを見て満足そうに頷いた椎名さんは僕に顔を向ける。

「さぁ、これで憂いは無くなったね。付いて行っても良いよね。リウイ君」

「え、えっと…………」

 まずい。非常にまずい。どうすればいいんだ⁉

 そう思い悩んでいると。

 背後から、何か派手な破壊音が聞こえて来た。

 何だろうと思い振り返るとそこに居たのは。

「ああ、リウイ様。御無事でしたか!」

 リリムだ‼

 やばい。かなりやばいっ。

 此処は何とかしないとかなり不味い。

「よくぞ御無事でっ。此処からはわたしにお任せを。古龍如きわたしに任せれば・・・・・・っ⁉」

 話しながら僕の傍に来たリリムは目の前にいる存在を見て一瞬だけ固まった。

 それは椎名さんも同じの様で、リリムを見るなり固まった。

 二人は驚きのあまり固まったが、それも一瞬だった。

「「くたばれ。邪魔者‼」」

 二人は何処からか武器を出して戦闘を始めた。

 はぁ、こうなるから会わせたくなかったんだよな。

 戦闘音を聞きながら僕は溜め息を吐いた。

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