閑話 そんなのあり⁉
今回はレグルス視点です
一本道しかない洞穴をわたし達は歩いている。
「何だ。古龍が棲んでいるというから、洞穴に入った途端襲い掛かって来ると思っていたけど違うようね」
一緒に行動する事が多いボノビビがわたしの後ろを歩きながら呟く。
「龍と言っても大差あると聞いているわ。強そうだったら逃げれば良い。弱ければ話のタネに狩れば良いだけよ」
先頭を歩いているアングルボザは自信満々に言う。
「龍か。故郷に居た竜とどう違うのかしらね」
「さぁ、あたしも知らないわ。だから、こうして付いてきたのだけどね」
バイアとアルティナは龍という存在を見た事がないからか興味本位で着いて来たようね。
かくいうわたしも見た事が無い。
昔、父も母も竜と戦った事があるが龍とは戦った事はない聞いた事がある。
幼かったわたしは竜はどれくらい強かったの訊ねると。
『それほど苦労しないで倒せたぞ』
二人は口を揃えて言う。
竜がそんな存在ならば、同じ龍と言われる存在も倒せるのではと思いわたしは古龍の巣へと行く事にした。ボノビビには声を掛けていたが、まさかアルティナ達もついて来るとは思わなかった。
仕方がないので連れて来た。戦力にはなるだろうし。
「おっ。どうやら終点のようね」
先頭のアングルボザがそう言って手を振る。
此処からは出来るだけ音を立てずに行動しろという意味だ。
わたし達は頷いて出来るだけ足音を立てない様に歩き出した。
足音を立てない様に進んでいると。目的の存在がいた。
「・・・・・・・・・・・・」
これが、龍なのね。
わたしは初めて見る存在に目を奪われた。
蛇の様に長い身体に蝙蝠のような羽を生やしている。鹿のような角を生やした蜥蜴のような顔をしていた。一番目立つのは鱗だった。
何処から光を取り込んでいるのか、龍が居る場所だけ明るかった。
その明かりに照らされた鱗は、赤、オレンジ、紫、青、緑、黄色といった具合にコロコロと色が変わる。目を瞑っているのでどうやら眠っているようだ。
「眠っているようね」
「何かに巻き付いて寝ているようだけど。抱き枕?」
「龍専用の? 面白い枕ね」
小声で話すアングルボザとアルティナ。
「……一応聞くけど、これからどうする?」
「「「帰る」」」
三人とも同じ事を言う。
それはそうだろう。寝ているのに全身からとんでもない魔力を感じる。
こんな化物と戦うには、今の装備じゃあ犬死が良い所ね。
それが分かっているからか三人は戦うという考えはないようだ。
わたし達は来た時同様に出来るだけ音を立てない様にその場を離れる。寝ている人を起こさない様に歩くのって神経使うわ。
人じゃなくて龍だけど。
後少しで、龍が寝ている所から出る事が出来るというところで。
寝相なのか龍が足で地面を叩きだした。
叩いた衝撃で周囲が軽く揺れた。
その揺れで天井の一部が龍の頭に落ちた。
カツンという音がして直ぐに龍が目を覚ました。
目を覚ました龍はわたし達をジッと見る。
わたし達も思わずジッと見た。
「…………逃げるわよ‼」
『GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOO‼』
わたしが叫ぶのと龍が咆哮するのは同時だった。




