第86話 さて、どうした事だ?
公都を出た僕達は一路副都『ドレディンス』へと向かう。
事前に魔物が多く出ると聞いてはいたが、都から少し離れると出るわ出るわ。
「あはは、此処の所思いっきり身体を動かせてなかったから楽しいわっ」
「十二、十三、纏めて十五っ。はっはは、まだまだ来るわね」
「やっぱり身体を偶には身体を動かさないと駄目ね。久しぶりに身体を動かすと動きが鈍いのが分かるわ」
と一部の好戦的というこのルートを進む人達が大いに楽しみながら魔物を屠っていった。
皆さん。楽しそうに身体を動かしているようで何よりです。
僕はと言うと馬車の中で戦闘音と魔物の悲鳴を聞きながら副都に着いたら何を商売の主軸にするか、リッシュモンド、リリム、ハヌマーン、アクパラの四人と頭を突き合わせて考えていた。
「う~む。ここでもアラクネの生糸を売りにするにはちょっと商品の魅力が弱い気がするんだよな」
「と言いますと?」
「西方に近いから。西方の何とかバタフライの幼虫から獲る生糸もあるだろう」
「クリスタル・バタフライですか?」
「そうそれ。その魔物の生糸が西方じゃあ主流のようだからね。アラクネの生糸だとその商品の前じゃあ霞むかもしれない」
「品質で勝負するというのは?」
「生産数は少ない以上そうするしかない現状でこれ以上の品質の強化をする場合はバシド達の体調管理を考えないと駄目だ」
「そうなりますと余計に金が掛かりますな」
「品質向上の為に金を掛ける上にバシド達の体調にも金が掛かるとなると、下手したら破産するかもしれませんな」
「そうなんだよな」
どうしたものかと考える僕達。
何かこれはという商品を作った方が良いだろうな。
そう頭を悩ませていると。
「ボス。そろそろ例の山が見えますぜ」
御者をしているカブ―モスが声を掛けて来た。
「例の山? ああ、古龍が棲んでいるって言う『ブリマウテン山』か」
僕は揺れる馬車の中で立ち上がり、御者台の所まで行ってそっと顔を出して外を見た。
「左手に見えるのが『ブリマウテン山』ですよ」
カブ―モスが教えてくれたのでそちらを見ると、其処には大きな山があった。
ざっと見た感じ標高は富士山よりも大きいなモンブランぐらいはありそうだな。
ちなみに菓子のモンブランは同じ名前の山をイメージして作ったと言われている。
上の方に雪が降ったのか白くなっている。
「この国は四季があるの?」
「そんなに大まかではありませんがあるそうですぜ。冬は地面にも雪が積もるとか」
「へェ、そうなんだ」
魔国では冬になると雪は降るが積もる程降らない。
昔雪が降っているのを見て「雪遊びしたいな」とポツリと零したのだが、何処で聞きつけたのかイザドラ姉さんが魔法を使って積もるぐらい雪を降らせた事があったな。
最もその後ロゼ姉さんにしこたま怒られていたけど。
雪が積もっているの山を見ているとそんな事を思い出した。そう言えば、皆元気にしているかな。
そう思って居いた所に急に馬車が揺れだした。僕は慌ててバランスを取った。
「っとと、何だ?」
「どうかしたの?」
「いえ。前の馬車が停まっていますので、慌てて止めたんです」
「どうかしたのかな?」
僕はリリムに声を掛けて共をしてもらい、馬車を降りた。




