第82話 どのルートを行くか
その夜。
僕は勢ぞろいした皆を談話室に集めた。
久しぶりの再会を喜んでいる中で、僕は皆に公都ではなく副都で商売をする事とその副都に行く為の道は三つある事を告げた。
「で、皆はどのルートを通りたいか教えてくれるかな?」
僕がそう言うと、皆は少し考えだした。
「……やっぱり、一番安全の道を行くべきではないでしょうか?」
「遠回りでも安全が一番よね」
「幾つかの都市を経由するという事は野宿をしなくて良いという事だから良いと思うわ」
デネボラみたいな慎重派は遠回りでも良いから安全な道に行こうと言う。
最後の野宿はしたくないという意見は、まぁ、女性だから仕方が無いな事だ。野宿だと髪を痛めると聞いた事がある。
「草原を駆けながら狩りをするのも悪くないな。食える魔物を狩れれば良し。食えない魔物でも何かしらに使える物が採取できる筈。ならば、副都に着くまでにどのような魔物が居るか調べておくのも一つの手段であろう」
「確かに、副都に行くのは商売をする為だ。ならば、商品になる魔物がどれぐらい居るのか知るべきね」
「草原ですから。魔物以外でも色々な物が採取できる筈だから、草原を行くのも悪くない」
アルトリアと言った狩猟を得意とする者達は草原を通るルートを使うべきだと言う。
確かに商売になる物を知るのも一つの手だね。
「何を言っているんだ。だったら、魔物が沢山出るルートに行くべきだろうっ」
「魔物を狩って副都に速く着く事が出来る。まさに一石二鳥ね」
「それに古龍が棲んでいる山があるそうじゃない。その古龍ってどんなのか見てみたいわ」
ボノビビと言った好戦的な者達は魔物を多く倒せるルートを行きたいと言う。
ついでに、通る道にある山に棲んでいる古龍を見て、あわよくば倒すつもりなのだろう。
流石にそれは勘弁だな。『龍殺し』なんてハイリスクハイリターンだからな。
前世の僕が持っていた領地というか、現この国に『龍の巣』から流れて来た暴れ龍が迷い込んで来た。
その龍がもたらした被害も倒す為に掛かった諸々の被害がデカいデカい。
その分、倒した龍から獲れた物は高額で売れて、被害の補填になったのは救いであった。
余談だがその龍は雌で倒される直前に卵を産んだ。
巣の中を探索していると卵を見つけたので、僕の前まで持って来た。
その時が丁度生まれる所で、殻を破るなり僕を一目見るなり可愛い声をあげて甘えてきた。
領地を襲った龍の子供だから殺そうという意見もあったが、生まれたばかりの命を殺すのは流石に気が引けたので僕が引き取って育てる事にした。
それが今では『八獣』の一匹だと思われる三つ首の龍なんだから驚きだよ。はっははは。
「考え中の所申し訳ありません。リウイ様。そろそろ、どのルートを行くか決めていただけますか」
ちょっと昔の事を思い返しているとリリムが声を掛けて来た。
「おっと、済まない」
「いえ、それよりも早く決めませんと。喧嘩になりますよ」
リリムが指差した先には自分の意見の方が良いと思い口論していた。
そうだな。早く決めないとな。




