第81話 ようやく此処から離れる事が出来る
「それで捕まえたジャイジェン達はどうだった?」
「へぇ。全員、奴隷落ちになりました。というか、あのジャイジェンっつて奴、此処がちょっとヤバくて売れるのかと心配でしたよ」
ダイゴクは指で頭を指す。
「都市まで運ぶ途中、ずっとブツブツと言っていたんですよ。『此処から俺のサクセスストーリーが始まる』とか『あの漫画の主人公も一度奴隷になって其処から出世したんだ』とかずっと言っていて気味が悪くて」
「そうなんだ」
やっぱり、僕と同じく前世持ちなのだろう。それも僕と同じ故郷の人と見た。
とは言えもう会う事はないだろう。
「それでジャイジェン達を奴隷にした事でお金が出来ましたので、どうぞお収めください」
ダイゴクはそう言って懐から革袋を出して僕に渡す。
手に持った感触からそれなりの量の金が入っているようだ。
「全員健康な体をしているという事で金貨三十三枚で売れました」
人の値段が金貨三十三枚。
高いと取るべきか安いと取るべきか分からないが気分が良いか悪いかで言えば悪いな。
これは前世も今世も僕が奴隷売買をした事が無い国で育ったからだろうな。
「ありがとう。じゃあ、此処で相談だけど、休息はどれぐらい欲しい?」
僕がそう尋ねると、ダイゴクは直ぐにその意味を察して顎に手を添えながら考えた。
「……そうですね。補給とか色々な面も考えて最低でも一週間は欲しいですね」
「分かった。じゃあ二週間後に此処を発つって皆に言ってくれるかな。後は」
僕は渡された革袋から十枚ほど出して残りをダイゴクに渡した。
「その金は好きに分配して良いよ」
「えっ、いやいや。若。この場合、全部若の懐に入るか、もしくはあっしらに少ない金を渡すのが普通と言うものじゃあないですか?」
「捕まえたジャイジェン達を売るって面倒な事をしてくれたんだからこれぐらいはしても良いと思うよ。その金は好きに使っていいから」
「はぁ。若がそう言うのであれば……」
ちょっと面食らった顔をするダイゴク。
「ところで、若。此処を発つというのでしたら目的地は決まっているのですか?」
「副都だよ」
「ああ、あそこですか。西国にある国は全部此処を通ると言われるぐらいの要衝ですね。しかし、公都からですと三つルートに分かれますね」
「三つのルート?」
「はい。一つは北門から出て街道に沿って行くルートです。このルートは一番安全ですが、副都に行く為には幾つかの都市を経由して行かないといけませんので一番時間が掛かるルートです」
「ふむふむ。後は?」
「二つ目は南門から出てその街道に沿って行くルートです。此処は都市が無い代わりに草原がありまして、そんなに強くない魔物が出ますし道もかなり大回りになります」
「成程。じゃあ、最後のは?」
「最後のルートは西門から出てその街道に沿って行く道ですが。途中にとある山がある事と魔物が多数出る事以外は特に平坦な道で副都に一番早く着ける道です」
「とある山って?」
「この山の名前はブリマウテン山と言われているのですが。遥か昔からこの山にはヤバイものが済んでいるんですよ」
「ヤバイもの?」
「龍ですよ。龍。竜じゃなくて龍の方です。あっしら『義死鬼八束脛』も敵にしたくない古龍が棲んでいるんです」
「古龍ね」
龍の中でも長い間生きた者は古龍と言われる。
その力は国を滅ぼす事が出来ると言われている。
「それって、この公都そ守護する二匹の龍の片割れ?」
「ええ、そうです。機嫌が悪い時以外は山に入らなければ危害を加える事はないので大丈夫だそうですよ。その道を使う商人から聞いた話ですがね」
「そっか。まぁ検討してみるよ」
「了解です。それじゃあ、あっしはこれで」
ダイゴクが一礼して部屋から出て行った。
僕は部屋にいるリリムに訊ねた。
「古龍と戦ったら勝つ自信はある?」
それを聞いたリリムは自信満々に胸を叩いた。
「大言壮語はしない主義ですが。貴方様のご命令とあれば神と戦って勝ってみせましょう」
「しなくていいから」
それを聞いて苦笑した。
さて、どのルートを通って行くかは皆に話してから決めるか。




