第79話 改めて自己紹介を
マイちゃんが現れた事で話が途切れた。
それでようやく話が出来るようになった。
「改めて自己紹介だ。こちらに居るのが公都を拠点にしている独立遊撃愚連傭兵騎士団『アヴァロン・オルドル』の総騎士団長のマイカ・S・ブリヴァニアだ」
「初めまして。マイカ・S・ブリヴァニアよ。気軽にマイカと呼んでくれるとは嬉しいわ」
笑顔を浮かべるマイちゃん。
改めて見ても昔と全然変わらないな。
「リウイ」
ティナが肘で僕を突っついてきた。
おっと見てて挨拶を忘れていた。
「初めまして。僕はリウイと申します。以後お見知り置きを」
「あたしはアルティナ。リウイのメイドをしているわ」
「うんうん。アルティナちゃんにリウイ君か。よろしくね~」
僕達を見て面白そうな顔をしているマイちゃん。
「それにしても、いきなり来たので驚きました」
「済まんな。仕事を終わらさせたこいつが突然『ユエのお気に入りの子に会いたい~』と言い出して、止める間もなくここまで来たのだ」
ユエは溜め息を吐いた。
「まぁ、最もそのお陰で懐かしくて忌々しい奴に会えたから良しとしよう」
ユエはそう言って、リリムを睨む。
リリムも、それはこちらも同じ事と目で言っている。
うん。そうだね。もし、二人が来るって先触れが来たら、間違いなくリリムを何かの用事に行かせていたな。
リリムにこの二人に会わせたら混ぜるな危険ではなく、噴火寸前の火山にダイナマイト投げ込むようなものだからな。
今も普通に話しているだけなのに、何故か空気がピリピリしている。
「リウイ。何か空気が重いのだけど?」
「奇遇だね。僕もそう思う」
「何とかしないさいよ。リリムの主でしょう?」
「出来たらしているから」
僕とティナが話していると、マイちゃんが笑い出した。
「ごめんね。君たちの会話を見ていると昔を思い出しちゃった」
「昔ですか?」
「そう。わたしには男の子幼馴染が居てね。その子とわたしは今の君達みたいによく他愛の無い話をしていたんだ」
何か懐かしい物を見るかのような目で僕達を見ているマイちゃん。
「……楽しかった。本当に楽しかったわ」
「マイ」
ユエは慰める様にマイちゃんの肩を置いた。
うん? でも待てよ。
どうして、僕が転生して目の前に居る事を言わないんだろう?
言えば別に気兼ねなく話が出来るのに。
そう思っていると、ユエがマイちゃんの位置から見えない位置でハンドサインを送って来た。
い・つ・た・ら・も・ん・だ・い・が・で・て・く・る。
それを見て僕もハンドサインを送る。
も・ん・だ・い・つ・て・な・に・?
ひ・み・つ・だ。
ええ、そこまで言って秘密ってのは無いだろう。
続きを聞こうとしたら、ユエが口を開いた。
「ところで、リウイ殿。例の話は考えてくれたかな?」
「例の話と言うと?」
「無論。公都で店を開く話だ」
「それにつきましては副都で店を開くという話になった筈ですが?」
変だな。前に会った時にこの話はしたはずだけど。
「だそうだ。マイ。諦めろ」
「ええ、そうなの。此処に住んでいるからだからという訳じゃないけど、此処って結構良い所だよ? 此処で商売しても問題ないと思うけど」
売り上げとかそういうのは問題ないけど、僕の心が問題だ。
此処で店を開くという事は、僕がしてきた事が、かなり脚色された状態の話に聞く事になるだろう。
そんな苦痛を聞くぐらいなら、さっさと副都に行って店を開いた方がマシだ。
「いえ、此処は商売の先輩のディアーネ会長の判断に従おうと思いまして」
「そっか。残念ね。まぁ、同じ公国に居るのだから、気軽とは言えないけどそちらの店に行く事もあるでしょうね。その時はよろしくね」
「はい。分かりました」
ふぅ、いきなりマイちゃんが現れた事には驚いたが興味が湧いて来ただけだと分かり肩の荷がおりた気分だ。
それからは、マイちゃん達が僕が居た魔国について色々と訊いてきたので答えれる範囲で話した。
マイちゃんもだがリリムも興味津々だったのはちょっと驚いた。




