第76話 何でこうなるかな?
「成程。つまり、あのアマギに殺されて魔人族に転生したと」
「うん。そうなるね」
気のせいか。今、別な事を言わなかったか?
「ふふ、魔人族に転生したとは好都合。これで一生お側にいられるわ♥」
「何か言った?」
「いえ、何も。説明されたお蔭で事情は分かりました。では、これからはリウイ様と呼べば良いのですね」
「そうなるね」
「では、リウイ様」
「なに?」
「わたしも旅のお供に加えてもらえますか?」
リリムは笑顔で訊ねてきた。
さて、どうしたものか。
実力は問題ない。頭も切れる。更には僕の前世の事も知っている。
これだけでもう召し抱えても問題ないと思える。
しかし、こう言っては何だがリリムは僕が知っている女性の中でもアクが強い。
偶に領地に遊びに来ていたマイちゃんと喧嘩していた事があったからな。
マイちゃんも「ぐぬぬ。此処で年上キャラが出て来るとか、普通に無しじゃん。巨乳でお姉さまキャラとか反則でしょう。でも、ノッ君との付き合いの長さはわたしの方が長いのだからこれで勝負をすれば勝てる‼」と訳が分からない事を言っていた。
「リウイ様?」
「ああ、ごめん。そうだな。じゃあ、付いて来てくれるかな?」
僕はリリムに手を差し出した。
リリムはその手を恭しく受け取り、裏返して手の平に自分の唇をを押し付ける。
「貴方の為なら地獄だろうと喜んでお供いたします」
リリムと出会えた僕達は墓を後にした。
てっきり墓守をしているのかと思ったが、週に一度掃除に来るだけで、今日が偶々掃除する日だけだったそうだ。
しかし、こうして出会えるなんてセリーヌ王女の導きか?
何にしても、こうしてもう一度出会えたのだから何も問題はない。
僕達は皆にリリムの事を紹介する為に宿に戻る事にした。
宿に戻ると一階にある談話室にティナ達が談笑しているのが目に入った。
「ただいま。今戻ったよ」
「あっ。おかえりなさいませ。リウイ様」
「元気になったようね。良かったわ」
「そうね。ところで、その女の人は誰?」
ティナは僕の後ろにいるリリムを不審そうに見ている。
ティナがそう言いだしたので、カーミラ達もリリムを見る。
「初めて見る顔ね。『鳳凰商会』の人かしら?」
「わたしも分かりません」
「で、あんた誰?」
ティナが代表してリリムに訊ねた。
リリムはティナ達を見て微笑みながら口を開いた。
「初めまして。リウイ様に一番大切な物を捧げたリリムと申します。以後よろしく」
「「「っっっ⁉‼」」」
えっ、なにそれ?
リリムに顔を寄せる。
「何か貰ったっけ?」
「ええ、わたしの忠誠と心を♥」
忠誠は分かるけど心を貰ったつもりはない。
「何でしたら、本当の意味での初めても捧げてもいいですよ♥」
「えっ、それって」
僕がそれ以上訊こうとしたら。
背筋に寒気が走った。
振り返ると、ティナ達が凄い目で僕というかリリムを見ていた。
「ふふふ」
「「「………………」」」
微笑むリリム。凄い形相のティナ達。
これは何か起こるな。




