カドモスの本音
ああ、怖かった。
わたしカドモス・フォン・フィルマーは先程の少年に恐怖していた。
この国の成人男性に比べても、わたしは大きい方なのだが、そのわたしよりも大きい男が居るとは。
しかも、何かとんでもない威圧感を感じて、思わず敬礼してしまいそうだった。
わたしも残るように言われているのは、詳しくは知らないと言うと、向こうも納得してくれたようだ。
ふぅ、気を取り直す為に深呼吸しよう。
息も落ち着いたし、さて、適性があった人達を連れて行くとしよう。
「では、皆さん。参りましょう」
わたし達は異世界からの客人たちを連れて、契約の間に向かう。
この部屋は魔法と契約する時に使う部屋だ。
魔法と契約するというのは、あくまで例えだ。
この世界には、様々な神が居る。その一柱と契約する事で魔法を行使できる。
また、神以外でも精霊や力を持った魔獣と契約しても使える。
わたしも神ではなく、精霊と契約している。
我が国の魔法師団でも神と契約する者も居れば、精霊と契約する者も居る。
さて、この者達は何と契約するのだろうか。
(一番注目すべきは。彼か)
わたしは後ろを振り返り、その彼を見る。
名前は確か、イノータとか言っていたな。
我が師団の前師団長が彼を大層買っていた。
話を聞いた限りでは、あのエリゼヴィア様が気に入った人物のようだ。
前は魔法師団の副団長を務めていたが、今は師団長に務めている方だ。
前師団長であるアスクレイ侯爵が、前回の戦争の責任を取り辞任された。繰り上げで、副師団長から師団長になったが、その実力は親にも勝るとも劣らない力を持っている。
槍も魔法も練達に使えて、その上指揮官としても一流だ。その他にも芸術や音曲にも通じるという多才な方だが、気難しく口が悪いので台無しだがな。
そんな方に気に入られるとは、かわいそげふんげふん、余程の才能があるのだろう。
まぁ、悪い方ではないので虐める事はしないだろう。多分




