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第68話 此処もか

 天城君の後世の評価を聞いて気持ちは沈んだが、もう会う事もないだろうと気持ちを切り替えた。

 僕みたいに前世の記憶を持ったまま転生してもう一度会える事が会えたとしても水に流せばいい。

 前世の事で縛られるつもりはない。

 今を楽しく生きる。これは一番重要だから。

 気持の切り替えも終わりユエの店へと着いたのだが。

「えっ⁉ 居ない」

「はい。会長は支店長達を集めた新年の始まりに行う定例会議で出掛けております」

 受付の人が済まなさそうな顔で謝る。

「その会議は何処で行われているか分かりますか?」

「申し訳ありません。幹部以上の者でなければ誰も知り得ません」

 ふむ。意外に情報規制しているな。

 それだけ重要な会議なのか? それとも場所を知られると不味い人達でも居るのか?

 そこら辺は今度ユエに聞くとしよう。

「リウイ様についてはディアーネ会長から聞いております。会長から『もし、わたしが居ない時に訪ねて来たら『マンティコアの居眠り亭』に行ってわたしの名前を出せば泊まれるように手配してある』と言われております。これがその宿までの道を描いた地図です」

「ありがとう。ディアーネ会長が帰って来るまでその宿にいさせてもらいます」

「畏まりました」

「じゃあ、これで」

 受付の人にそう言って、僕は店を後にした。


 店を出ると、馬車から出ていたティナが出迎えてくれた。

「おかえり~。あの会長とは会えたの?」

「いや。会議で店には居ないって」

「そう。じゃあ、何処か適当な宿を探して暫くは観光しない」

「ああ、宿だけど。ディアーネ会長が手配してくれたから其処を行こう」

「何て名前の宿なの?」

「『マンティコアの居眠り亭』だって」

「ふ~ん。そうなの。じゃあ、カブ―モス」

「何だい。ティナ嬢」

「宿の名前を聞いたわね。其処に行くわよ」

「へいへい。っと言いたい所だけど、公都に来るのは初めてだから。ボス。地図を見せてください」

「ああ、分かった」

 僕達は馬車に乗ってカブ―モスに地図を渡してその『マンティコアの居眠り亭』へと向かう。


 店を出た僕達は馬車に揺られながら進む事数十分。

 こうして進んで目的地に到着しない所を見るとどうやら結構大きな都なんだな。

 千年経っているから大きく発展したのだろう。

 そう思いながらその風景を見ていると馬車が止まった。どうやら目的地に着いたようだ。

「地図だと此処になります」

「ご苦労様。馬車を止めれるかどうか聞いてみるね」

 そう言って僕が馬車を降りると。

「わたしもお供します」

「では、わたくしも」

 アマルティアとカーミラがお供を申し出た。

「あたしもあたしもっ」

「いや、三人も要らないから。カーミラとアマルティアだけいいよ」

「むぅ~」

 ティナが唇を尖らせた。

「ふふふ、悪いわね」

「先程は譲ったのでいいでしょう?」

 カーミラ達は笑うとティナは顔を背けた。

 ふぅ、別に直ぐそこなんだからついてこれなくても問題ないだろうに。

 そう思いながら馬車を出てその宿を前に来た。

 白い外装の四階建てで何かの石材で造られた宿であった。

 宿に入ると、まず出向明けたのは天井にシャンデリアのがついているエントランスホールであった。

 吹き抜けにしてある所為か、天上が高く見える。床も塵一つない上に磨かれた石材を敷かれている。

 従業員の人達も綺麗な制服を着ていた。

「此処で合っているよな?」

「そうなのでしょう?」

「ちょっと聞いてきますね」 

 アマルティアが近くにいる従業員に話しかける。

 二~三話をした後、僕達の所まで来た。

「間違いなく、ここは『マンティコアの居眠り亭』だそうです」

「何か高級宿に来たみたいだな」

「でも、都なんだからこれぐらいレベルの宿はあっても良いと思うわ」

「そうかな?」

 ユエの事だから、僕達が居た世界の知識をこの世界に持ち込んで作ったのではと思うな。

「ほら、はやく受付にいくわよ。リウイ」

 カーミラが僕を引っ張って受付へと向かう。

「すいません」

「はい。何でしょうか?」

「『鳳凰商会』の会長に公都に来たらこの宿を使うようにと言われてきた者です」

「『鳳凰商会』の会長がですか。失礼ですが。御名前は?」

「リウイと申します」

「リウイ様ですね。少々お待ちを」

 受付の人が奥へと向かう。少しして。

「お待たせしました。リウイ様ですね。お話は『鳳凰商会』の会長から聞いております。お部屋にご案内しますね」

「外に馬車を止めているのだけど、何処に泊めたら良いのかな?」

「それでしたら当宿の馬車の厩にお停めください」

「分かりました」

「では、この紙にお名前を」

 受付の人が紙とペンを渡してきたので、それを受け取り名前を書く。

 書きながら気になった事を僕は訊ねる。

「どうして此処は『マンティコアの居眠り亭』という屋号なんですか?」

 宿の屋号にしてはちょっと物騒ではないだろうか?

「当宿は初代公王がこの都市に入植した時に造られた宿でして。当宿の初代オーナーが屋号を考えている時に初代公王が飼っているマンティコアが当宿の屋根で昼寝をしましてね。其処から取ったのです。当初は『マンティコアの昼寝亭』にするつもりだったのですが、言い辛いので居眠りにしたのです」

「マンティコアって魔獣でしょう。客は怖がったんじゃあないのですか?」

「いえ、それが。マンティコアが昼寝をしているという珍しい物が見れる事とマンティコアが居るという事で警備は万全だろうという事で評判を呼びましてね。お蔭で長らく宿が続いております。これも初代公王様のお蔭です」

 本当にそう思って居るのか嬉しそうな顔をする受付の人。

 そう言えば、飼っていたマンティコアは餌を食べ終わるといっつもフラフラっと何処かに行っていたな。まぁ、人を襲ったという報告は聞かなかったので好きにさせていたが、そんな所で寝ていたとは。

 それにしても、ここでも初代公王か。はぁ、そんな大した事はしてないんだけどな~。

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